エコノミックガーデニング、日本では、その名前さえまだまだ認知されていない
ようであるが、地域振興施策の1つとして、また、地域中小企業、支援団体と行
政、そしてITコーディネータの有力なスキームベースとして、是非、考えてい
きたい仕掛けである。
1.エコノミックガーデニングとは
エコノミックガーデニングはアメリカ・コロラド州で地域の中小企業を成長させ
ることで、地域経済の活性化を図ろうとの目的から始められた新たな試みである。
この方法はアメリカですでに一定の成果を上げている地域経済の活性化方式であ
るが、アメリカ以外ではまだほとんど実行されていない。アメリカでは従来の地
域活性化政策として重視されてきた企業誘致などの政策に代わる政策として注目
されている。
雇用不安を抱え、地域の停滞に悩む日本にとっても、これは重要な意味を持つ施
策であると思う。
地域経済では中小企業が多くの雇用を産みだす。米国では従業員数10人から99人
の企業の成長が雇用拡大に与える影響が大きく、日本でも同様の中規模企業の雇
用拡大に貢献する。さらに、地域経済の頑強さと、産業構造の多様性と、起業家
精神が旺盛な中小企業の活動とが、いずれも密接に関係している。
このため、地域経済活性化政策には、中小企業家の経営判断に資する手法を含む
ことが有効となる。
2.その推進は?
地域経済の活性化を考える上で、地域の諸側面を網羅する観点が必要である。そ
の諸側面には、企業や他の生産者のみならず、理念やプライド、職人や知識労働
者の役割、公共施設や自然資源、自治組織や金融ネットワークなどが含まれる。
これらの諸側面のバランスを取りつつ、地域にある人的資源の連携を築くことが
求められる。
エコノミックガーデニングの主体は、自治体の機関やNPO(非営利特定法人)であ
ることが多い。そして、その他の政府機関、地域の経済団体、大学、金融機関な
どと協力して事業を進めている。日本でも、わずかではあるが、市レベルでの動
きが出ている。組織形態よりも重要なことは、エコノミックガーデニングを実施
するための資金を確保することと、情熱のあるスタッフを得ることである。
地域の中小企業に「継続的な繁栄」と「状況の変化に対する頑健性と対応能力の
強化」とをもたらす施策が日本型のエコノミックガーデニングであると言える。
従来の単発的、待ち姿勢的な施策と意識では無く、元気な中小企業と老舗企業と
の連携、中小企業の情報発信への協力、積極経営化のための関連情報の提供、中
小企業と金融機関との連携、各種の支援事業でのコーディネーション機能、を総
合的、横断的に充実させる施策が求められる。
3.その具体化にはIT活用がポイント
この推進には、総合的なインフラ整備を実施することの施策視点の大きな転換が
必要であるが、具体化に向けては、ITの徹底活用が重要となる。
1)データベースの整備
企業に必要な情報(他社情報、市場動向、消費者情報、信用調査情報など)を的
確に提供する。
2)Webマーケティングの活用
Webサイトブランドアップの支援、ソーシャルメディアによるマーケティング
の拡大対応など従来のSEO対策に加えた総合的なマーケティングの実施を行う。
3)IT経営スキル活用
自社の経営戦略、営業戦略化に向けての対応をSWOT分析、戦略マップ化など
の手法により、精度を高める。
4)地域情報の活用
Googleマップとその連動サービスやGIS化の推進を実施することにより、
地域のより詳細、具体的な情報を定量的に把握する。
5)地域コーディネータとしての対応
総合、横断的に推進するためのやる気のある(従来の行政的な義務感の強い姿勢
ではなく)要員の育成とやる気のある企業への継続的な支援を行う。
行政関係のメンバーの認識では、上記のような施策は既に実施しているので、今
更といった話である。しかし、これまでの企業支援、セミナー等でお聞きした中
小企業経営者からは、このエコノミックガーデニング的な支援はないのでは?と
のコメントもある。
今後、地道な推進を進める必要がある。
更に、Webマーケティングへの対応、地域含めた関連データの収集・分析、I
T経営の推進、はいずれも、中小企業の自社拡大の視点から見れば、推進しても
らいたい内容ではあるが、自社の奮起一番と具体的な活動により、実現できるこ
とでもある。
ITコーディネータも中小企業のビジネスプロセスを単独、単体で見ていくので
はなく、地域インフラをベースとした幅広い支援が必要でもある。
中小企業経営者の意識改革、並行した地域での施策実施、両者をうまくコーディ
ネートするITコーディネータの活動、3者のトライアングルが望まれる。
■執筆者プロフィール
小久保弘
京都、滋賀における中小企業向けの経営戦略、営業戦略、システム構築支援などを
個別企業、研究会による地域メンバー、一般セミナー等に対応している。
最近は、「新しい公共」のための協働化基盤構築、人材育成などを行政含め対応中。
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