ITコーディネータの方にとっては、経営学は必須であり、経営者にとっても
知識として知っておくことは決して損にはなりません。そこで、先日、9月9日
と10日に、日本経営学会第85大会に出席してまいりましたので、報告いたし
ます。
今年の統一論題は、「リーマン・ショック後の企業経営と経営学」であり、サ
ブテーマが、1)「現代企業の変容と課題:理念・戦略・管理」、2)「現代経
営学の存在理由と方向性」でありました。特に、今年は東日本大震災があったの
で、特別フォーラムもそれに関することでした。その内容は、以下の通りです。
1、特別フォーラムA:「東日本大震災を考える」
パネリスト:貫 隆夫(大東文化大学)、中瀬哲史(大阪市立大学)
井上照之(大東文化大学)
2、特別フォーラムB:「「日本再生」と経営者の役割」
パネリスト:森下俊三(西日本電信電話(株)相談役
小嶋淳司(がんこフードサービス(株)会長
上村多恵子(京南倉庫(株)社長)
蒲島郁夫(熊本県知事)欠席
3、今年の統一論題:「現代企業の変容と課題:理念・戦略・管理」1
パネリスト:櫻井克彦(東海学園大学)「現代企業の変容とその意味」
守屋貴司(立命館大学)
「リーマン・ショック後の労働の変容と問題点」
小林喜光((株)三菱ケミカルホールディングス)
「Management of Sustainnability(MOS)と4次元経営」
4、今年の統一論題:「現代企業の変容と課題:理念・戦略・管理」2
パネリスト:風間信隆(明治大学)
「グローバル化の進展とドイツ的企業統治の進化」
大竹慎一(President;Ohtake,Urizar&Co)
「リーマン・ショック後の設備投資の変化」
上田良一(三菱商事(株)副社長)
「リスクマネジメントによる経営改革:三菱商事の事例」
5、今年の統一論題:「現代経営学の存在理由と方向性」
パネリスト:藤井一弘(青森公立大学)
「市場主義そして/あるいは経営学」
榊原研五(慶應義塾大学)
「経営学における厳密性と適切性」
上林憲雄(神戸大学)・「経営学とはどのような学問か」
私は、2と5に参加しました。フォーラムでは、国の危機管理体制の構築やエ
ネルギー基本計画の見直しによる経済成長、経営者の意識の問題、経済同友会の
「復興計画に関する提言」の紹介などの意見が出された。
統一論題では、討論者と呼ばれる先生が各報告者について、報告のポイントと
貢献・評価をし、問題点を指摘して討論を進める。同意される点もあるが、かな
り厳しい意見も述べられる。それに対して、報告者は指摘事項について説明、反
論などをする。ただ、参加者からの質問も含めて時間が短く、ちょっと消化不良
のような感じであった。また、主催者も述べていたことだが、統一論題テーマに
合っているのか疑問に思った。
自由論題は6会場に分かれており、聞けるのが限定されるのが残念であった。
テーマは多岐に渡っており、ここにすべて紹介することはできないが、私が参加
した会場では、中小製造業に関することやガバナンス、長寿企業について発表さ
れていた。私の意見として、大企業しか対象としていなかったり、東京地区に限
定していたり、根拠のない報告者の考えを言われたり、先行研究を調べていなか
ったりなど、少し不満が残った。
今回、学会に参加して思ったことは、保守的でスピード感が感じられなかった
ことである。経営学は実践に対してどのように貢献できるのかと、問題提起をし
ておられる先生もおられたが、正直、まだその段階かという印象であった。参考
までに、今年の中小企業診断士の理論研修の内容を以下に掲載する。
1)中小企業の事業再生、2)ITを活用した経営戦略、3)中小企業の経営
革新支援、4)中小企業の海外展開支援、5)戦略的CSRによる中小企業の活
性化、6)これからの品質管理、7)中小企業の生産性向上
であった。
研究者と実務家との違いは大きい。
■執筆者プロフィール
クリッジナリティー 代表 米田 良夫
中小企業診断士、ITコーディネータ、ビジネスコーチ。
電話番号:0745-77-0722
E-mail:y-yoneda@credgenality.com
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