中小零細企業の現場から (5) / 米田 良夫

 今期も半分が過ぎようとしています。そこで、前半を振り返ってみたいと思い
ます。
 景気が回復傾向にあったが、3月の東北の地震の影響が大きく響いている。以
下、それをまとめてみました。

1、原材料の入荷ができなかった。または、予定が遅れた。
  一番多かったのが、原材料の入荷が出来なかったことである。印刷業では、
 原紙が入ってこず、受注分を処理できなかった。建築関係では、合板やバス、
 炊事関係の部品などが入荷せず、リフォームや新築工事がストップした。金物
 卸売業では、一部入荷しないものがあったので、代用品(輸入品)で賄ったが、
 品質は悪かった。スクラップ業者では、震災を受けた工場から入荷しないだけ
 でなく、被爆のことも影響した。

2、原材料の値上がりと値引きを要求された。
  原材料の不足と震災地での優先で値上がりした。また、震災関連だからと値
 引きを要求する取引先もあった。

3、売掛金の回収遅れが心配である
  取引先を通じて東日本のエンドユーザーに納めている。ユーザーが影響を受
 けており、今までの売上の回収ができるのか、また、受取手形が期日に決済さ
 れるのかどうか心配である。

4、デパートなどの販売会が中止になった。
  ファッション関係では、東京のデパートでの販売会が中止となり、大きな販
 売機会を失した。

5、外国の大使館が大阪へ移転してきた。
  鉱物を輸入している輸入国の大使館が東京から大阪に移ってきた。今後はよ
 り親密な関係を築けると思う。

6、自社に影響はなかったが、取引先に影響があった。
  自社自身では影響がなかったが、取引先に影響があり、今後の受注に影響す
 るのではないか。また、関東での下請け工場は被害がなかったが、今でも、余
 震が続いている状態である。

7、自粛ムードにより、取引先が設備投資を控えた。
  得意先が社会の自粛ムードから、設備投資を控えており、予定作業が先延ば
 しになったり、中止になった。

8、得意先が廃業した。製品も出荷できない。
  仙台に得意先があり、1社が廃業した。東北地方へ販売している関東の配送
 センターが被害を受け、納めていた商品が傷つき返品されてきている。それを
 検品して不良になったものを修理して再納入している。取引先はこの分は引き
 取ってくれるのだが。卒業記念で作った分が出荷できない状態である。他に転
 売できず影響がでている。

9、外国への輸出で証明を出したい。
  工具を輸出しているが、輸出国で被爆を心配しており、非被曝証明をとるこ
 とで顧客に安心感を与えたい。

10、東日本でできない仕事が入ってきている。
  ある部品加工業では、東日本の工場が被害にあい、仕事が回ってきており、
 大変忙しい。また、別の工場では、最終納入先が原子力発電に関係しており、
 受注キャンセルはあったものの、補強等のための特急品の仕事が入り、現場は
 混乱が続いた。
  関東地方のお寺が地震の影響で、仏像等に損傷をきたしたため、その補修で
 仕事が追いつかない状態の事業所もあった。

 以上をみてみると、全く影響がなかったところが25%で、悪い影響があった
ところが67%あり、ほんの一部の事業所(8%)のみ仕事が忙しくなっている。
 現在、少しずつ回復傾向にあるが、昨年までの不景気にこの震災の影響で、中
小零細企業は業績が悪化している。国は株安や円高対策を早急に行い、景気の回
復を図ることが重要であり、中小零細企業も積極的な努力が必要となる。


■執筆者プロフィール

 クリッジナリティー 代表 米田 良夫

 中小企業診断士、ITコーディネータ、ビジネスコーチ。
 電話番号:0745-77-0722
 E-mail:y-yoneda@credgenality.com