電力危機を経営改善・改革に結び付けませんか/恩村 政雄

 本年3月11日、福島原子力発電設備の事故により、東京電力管内は予期せぬ計
画停電に陥り、製造業界はもとより全産業界に驚きと困惑。不測のことなので対
策に四苦八苦。脱原子力、ストレステストと原子力行政は大揺れし、整備済みで
稼動待ちの原子力運転にも待ったがかかり、稼動のメドがたたない状態。
 関西電力管内も全11基の原発の内7基が運転停止中、残り4基も順次、定期検
査に入り平成24年2月の高浜3号基の定期検査入りで全ての原発が停止。今夏の
節電を乗り切っても秋、冬、来年の春の電力供給は不確実。

 この事態に困った、関電はけしからん、賠償せよと言っても犬の遠吠え。逆転
発想で前向きにとらえ、創業以来、積もり積もった贅肉をそぎ落とし、筋肉質に
する絶好のチャンスではありませんか。

 そぎ落とす贅肉の対象として「時間」と「情報システム」に照準を当てます。

1.時間価値を高め、生産効率を向上、自己研鑽時間を産みだす。
 1日24時間は誰しもが共通に有しているものです。しかし有限の時間を満足い
くような使い方をしている企業は少ないと思われる。
 競合他社における設備投資や従業員のレベルが自社と50歩100歩、QCDは充
分で生産量も同等だが、定時を過ぎると照明が消えて会社には誰もいないとした
ら、その差は経営者の「時間価値」の認識の差に負うところが少なくない。
 定時内に本日の仕事量をさばくための意識と知恵の差は以下のとおり。
・各人の自主性で立てた計画的時間配分で、事務処理の知恵が向上。
・どうすれば時間を有効に使えるかを常に思考、ノウハウが蓄積。
・良い意味での従業員同士との競争意識で、お互いの技術力が向上。
・その受注案件に関った経営者・関係者全員の時間コストを把握し、受注額と実
 際にかかった総コストの差違検討で、見積り精度が向上

 時間価値の意識と知恵を具体化させるビジネススタイルは以下のとおり。
・全員が、全就業時間を、5分単位で記録すること
 (時間計測は10分、15分でも可だが、同じ手間なら難しいことに挑戦)
・全作業単位項目と、全受注案件をコード化し結びつけること
・毎月、全員で、業務効率化討議会を実施すること
 ビジネススタイルを見える化するツールとして有効なのは、スマートフォン
(高機能型携帯電話)の活用と思われる。スマートフォンは様々な機能を備える
優れものの携帯電話であり、ベンダーの情報システム企画力を活用し、必用な機
能をカスタマイズする。

2.情報システム活用状況の棚卸しでムダ、ムリ、ムラを排除する。
 この10年間で情報システム機器は飛躍的に性能向上し、インフラも国・産業界
を挙げて整備した結果、世界に誇れる水準にまで達している。
 しかし、情報システムリテラシーは満足すべきレベルなのだろうか。経営者が、
情報システムは難しいもの、一部社員のものといった従来の考えから脱皮できな
いまま経営していないか。
 作成された資料が、ほとんど見られず、棚の中にそのまま納められていて、何
のためにデータ入力、アウトプットしたのか判らないといった潜在的不満を抱い
ている経営者、経営幹部の意識を払拭し、経営に役立つ情報システムにするため
情報システム活用度合の棚卸を行う。その方法は以下のとおり。
・出力帳票種類・画面種類の一覧表(名称、活用担当部署、活用タイミング)を作
 成し、活用度合(ABCランク付)をユーザーに評価してもらう。
・作成帳票・画面が、実際の業務フローのどの部分をサポートしているかをマッ
 ピングする。
・本当に必要なのか、代替え資料はないかを検討する。

 活用度合の棚卸評価の方法には以下がある。
・不要資料、代替え資料の数値換算
・資料探しの短縮時間
・活用度の評価(有効、あれば良い程度、一部の数字だけ参照する程度)

 電力危機を好機として、「時間」と「情報システム」を初期ターゲットに捉え、
電気使用量の削減だけでなく、業務の改善・改革も視野に入れた取組みが待たれ
ます。


■執筆者プロフィール

O・B・C・C(経営コンサルタンツ)
恩 村 政 雄
 〒614-8046 京都府八幡市八幡砂田2-45
電話/FAX 075-981-3830 e-メール obcc.onmura@nifty.com

OBCCは不易流行の理念で貴社のクリエーティブをご支援いたします
経営革新、創業、フランチャイズ、IT化・利活用、リスクコントロールで
貴社の儲かる体質づくり、強い体制づくりをご支援いたします