職場のメンタルヘルスを考える/米田 良夫

 先日、平成22年の自殺者数が発表されました。前年比3.5%減の3169
0人で、13年連続3万人を超えました。性別では男性が約7割。年代別では5
0代が18.8%で一番多く、以下、60代、40代が続く。要因は健康問題が
約半数を占め、以下、経済・生活問題、家庭問題、勤務問題、男女問題が続く。
より細かくみると、うつ病が7020人である。
 
 毎年、3万人を超える自殺者がでるということは異常としか思えません。以前、
交通事故死が1万人を超えて大きく騒がれましたが、その数からも異常なことが
理解できます。

 労働者のストレスの現状はどうなのでしょうか。厚生労働省の「労働者健康状
況調査」によりますと、58%の労働者が、「仕事や職業生活に関する強い不安、
悩み、ストレスがある」と答えています。原因としては、男性では「仕事の質の
問題」「職場の人間関係の問題」が多く、女性では「職場の人間関係の問題」「
仕事の質の問題」が多くなっています。

 最近では、企業でもメンタルヘルス対策に着手するところが33.6%と増え
ております。ただ、それは規模の大きな事業所であり、中小企業では遅れている
のが現状です。心理的負荷による精神障害等で労災認定されることも急増してい
ます。その中で職種をみますと専門技術者が最も多くなっています。労災認定の
判断として、精神疾患発症時点からさかのぼって6ヶ月間の業務過重性の有無が
問われます。皆様はどれくらい残業されてますか。システム開発の世界では、1
00時間は当たり前、200時間されてる方もおられるでしょう。

 筆者がシステムエンジニアとして就職した時、胃をこわしたら一人前と言われ
てました。先輩や同期の友人もそれで辞めていきました。私自身も慢性の腸痛に
悩まされ続け、システム開発から10年ちかく離れて、最近ようやく良くなった
のかと自覚しています。一つ心に残るのは、部下がうつになっていた時、それは
気持ちが弱いからだと逆に発破をかけたことです。あの時にメンタルヘルスのこ
とを知っていればと悔やまれます。

 過労自殺事件として高額の損害賠償責任を認める事例もでてまいりました。そ
の例は、大手広告代理店の入社2年目の社員が長時間労働からうつ病にかかり、
自殺した件で、企業の責任を認めて、1億6800万円の損害賠償額が支払われ
たことがありました。 
 企業においては、メンタルヘルスに取り組むことは、従業員の働き方に十分な
考慮し、個性や能力を活かせるようにすることは、企業の責任であります。また、
法令を遵守することはもちろん、高額の賠償責任・モラールの低下、対外イメー
ジ低落など、リスクマネジメントの一環であります。

 国も労働安全衛生法の改正(2005年)や「過重労働による健康障害防止の
ための総合対策」(2006年改正)「労働者の心の健康増進のための指針」(
2006年)を示して取組んでいます。ただ、実際の現場では取組まれているか
疑問であり、中小零細事業所や派遣社員はどうかなど、問題が存在すると考えま
す。

 今後、数回にわたり、メンタルヘルスについて考えていきたいと思います。


■執筆者プロフィール

 クリッジナリティー 代表 米田 良夫

 中小企業診断士、ITコーディネータ、ビジネスコーチ。
 電話番号:0745-77-0722
 E-mail:y-yoneda@credgenality.com