安心して働ける職場って?/中川 普巳重

 最近のマイブームは「安心して働ける職場って何だろう・・・」と感じること
です。「考える」ではなく「感じる」こととしているのは、ご縁のあった企業さ
んで社長のお話を聞き、現場を見ることで「感じる」ことだからです。

事例1:
 出張から帰った社員に声をかける時、「何か言いにくいことはなかったか?」
と声をかける社長さんがいます。良い話は後でゆっくり聞かれるそうで、「言い
にくい話」は、何か問題が起こっている、急いで対応する必要があり、社員にと
っても言いにくい話を抱え込むとしんどいだろうし、会社としても早く状況を把
握して対応する必要があるからということです。
 報告を求められた時、何か良い情報を言わなければならないというプレッシャ
ーを感じ、現実とはちょっと違った状況を報告したことはありませんか?
私には思い当たることがあります・・・
 なぜ、そうしたのか?と振り返ってみると、良いことだけを求められていると
感じていた、結果・成果を要求・追求されているように感じていた、悪いことを
報告すると機嫌が悪くそれが悪い評価につながり自分の居場所が無くなるかもし
れないことに不安を感じていた等、マイナスの心理ばかりが思い起こされます。
 この会社の社員はなぜ素直に報告ができるのでしょうか?
会社から求められていることが明確に把握できている、人材育成に注力している
ことが全社で共有されている、厳しい言葉も受け入れることができる信頼関係が
ある等、「良好なコミュニケーション=信頼関係=安心して働ける職場」だと感
じました。

ワンポイント1:
 「良く聞く」ためには、
・相手を知り(日頃のコミュニケーションから得られる情報が大事)、
・聞く姿勢を示し(仕事の手を止めて相手を見て話を聞く、うなずく等)、
・日頃の声かけ(機械もメンテナンスをしないと壊れるように人も日頃のメンテ
 ナンスが大事)、
・承認(ほめる)、
を積み重ねることで信頼関係を築くことが重要です。

 コミュニケーションがうまくいっているなあと感じられる企業さんは、会社全
体で仕事以外の話も良くするようです。これは、コミュニケーションがうまくい
ってない状況で突然仕事の話だけをしても行動が伴わないケースがあることから
もわかるように、当たり前のことですが、良好なコミュニケーションがもたらす
信頼関係が大事なのだと思います。

事例2:
 「人は完全ではないので失敗をするのは仕方がない、失敗したことを振り返り
改善策を共に考えることが大切だ。良いところをもっと伸ばし、悪いところを改
善できるように。人は気付いた分だけしか成長しない。」と言われた社長さんが
います。
 しかし、失敗を人に知られることには抵抗があり、できれば隠したいと思うも
のではないでしょうか。失敗が明らかになってしまった時には、言い訳をしてし
まったりしませんか?
 失敗を正直に報告し、場合によってはみんなで共有する。そこにはやはり、個
人の成長を大切にしている社風が感じられます。

ワンポイント2:
 失敗を共有する時には、ありのままの状態、感じたことをそのまま「フィード
バック」する。非難や評価はしないという状況が重要です。

 この会社は、個々人が公私ともに目標を持ち、いま自分は何をすべきかを考え
る、役割をきちんと果たす、ことが企業にとって必要なこと、良いことである、
ということがしっかり共有されています。
 ここでも「良好なコミュニケーション⇔信頼関係⇔安心して働ける職場」であ
ると感じました。

 他にもいろんなことを日々感じますが、以下ちょっと書き出してみると・・・
・ありのままの自分で良い
・会社からの要求も厳しいけれど、言いっぱなしで放り出されるわけではない
・きちんと見てくれている、客観的に自分の状況が把握できる
・何を求められているのか、何を改善すれば良いのかがわかっている
・求められていることのやり方、改善するための方法がわかっている
・課題を克服することは自分の成長にもつながる
・お互いを認め合う風土がある
などです。

 これまでの内容を読んでいただき、
・自分にとって安心して働ける職場って何だろう?
・自分の会社の社員は安心して働いているのだろうか?
等について考えるきっかけになれば幸いです。

最後に
ワンポイント3:
 コミュニケーションを良くするためのキーワードをご紹介します。
どれも当たり前のことですが、無意識ではなく意識してやってみると何か変化が
あるかもしれません。

挨拶する、会釈する、名前を呼ぶ、お礼を言う、ねぎらう、感謝する、
目線を合わせて相手を見る、呼ばれたら顔をそちらに向ける、約束の時間を守る、
メールにすぐ返事する、相手が前に言ったことを覚えている、
変化に気付いて伝える、ほめる、叱る、教えてもらう、相談する、役割を与える、
仕事を任せる、食事などに誘う、趣味を聞く、その人の家族を気遣う


■執筆者プロフィール

中川 普巳重(なかがわ ふみえ)
京都中小企業応援センター コーディネータ
中小企業診断士、ITコーディネータ、日本経営品質賞セルフアセッサー、
キャリア・デベロップメント・アドバイザー
Eメール  fumie-na@k4.dion.ne.jp