10月14日付けの日経新聞の一面に「若年層可処分所得 女性が上回る」という記
事が掲載された。
2009年の総務省調査によると、単身世帯(勤労世帯)について30歳未満の女性
の可処分所得が男性を上回り、初めて逆転したというものであった。
---------------------------------------------------
30歳未満の単身勤労世帯可処分所得(月額)
男性:215,515円 (2004年より 7.0%減)
女性:218,156円 (2004年より11.4%増)
※可処分所得=実収入-非消費支出(税金、保険料)
---------------------------------------------------
逆転現象が起きた背景として男性の20%超が従事している「製造業の不振」と、
女性の比率が高い「医療・介護」は高齢化の進展で労働力需要が高まったことな
ど産業構造の変化を反映していると述べている。
本稿では、この記事からわかることについて、3つの観点から考察をしてみる。
1.産業構造変化への対応 ~迅速な対応と付加価値向上
昨今の円高傾向も相まって、大手企業の海外シフトがますます進んでいる。
ご承知の通り、中小製造業では大手の下請け構造からの脱却が急務である。
このような状況下、中小製造業の中には、いまある技術力を市場が期待できる医
療関連機器で活かすという方向転換で生き残りに成功しているところもある。
産業構造の変化を見極めて、迅速に対応することが非常に重要となる。
また消費者むけの製品をつくっている企業ではどうだろうか?
消費者の視点からみると、製品自体は壊れにくくなり一定の品質が担保されてい
るものの中から欲しいものを選択することになる。他社の製品と価格だけで差別
化することは限界がきている。高機能・低コストというだけでは、消費者はその
モノを選ばない。買って使い続ける中でどれだけのコトができるのかに期待して
いてそこから満足が生まれる。この状況に対処する方法の一つとしては、サポー
トやサービスなどの付加価値をつけていくことがあげられる。ものづくりだけで
はなく、アフターサポートも含めた対応について検討してみてはいかがだろうか?
2.給与水準の低下と就職氷河期 ~優秀な人材の確保へ!
このような逆転現象が起きた背景には男性若年層の給与水準が下がっていること
があげられる。1999年に270,386円あった実収入が、2009年には253,952円と減
少している。一方女性は230,341円が251,290円に増加している。
雇用形態の非正規化も進み、2010年の新卒就職率は91.8%と過去最低レベルの水
準となり、学生たちは「超就職氷河期」を迎えている。
医療や介護の分野では、人材不足が続いているようだが、多くの大手企業が採用
を抑制しているので、製造業や流通、サービス業などでは優秀な人材をとるチャ
ンスとなる。合同企業説明会やインターンシップ制度などをうまく活用している
企業の事例も増えてきている。大企業が採用を抑える厳しい時代だからこそ、逆
に中小企業にとってはいいタイミングとなりうることを期待している。
3.若年層可処分所得 女性が上回る ~メディアの功罪?
私自身がこの新聞記事のトップタイトルだけをみたときは、女性の給与水準が男
性を追い越したような印象を持ってしまった。実は新聞記事を見る前に、Twitter
のタイムラインにこの記事が並び、ホームページを閲覧したり、自分自身でリツ
イートをした。
よくよく中身をみていると、上回ったのは可処分所得であり、女性の収入が男性
を追い抜いたのではない。ここでは男性の税金や保険料が女性より多かったため、
逆転現象が生じたようだ。実際、給与所得は男性の方が8000円近く多い。(30
代より上の層では、男女の収入格差はどんどんひらいていっている)
一方受贈金などの特別収入については、女性の方が2000円近く多い。女性は貰い
ものや、オークションなどで現物を売って男性より少し稼いでいるということに
なるのだろうか?
新聞などメディアで掲載された記事のインパクトはとても強いが、よく中身をみ
て事実をきちっと把握していないと、誤った理解をしてしまう危険がある。
様々な情報がネットやメディアから入ってくる時代であるこそ、その内容の冷静
な分析と理解をするよう私自身も意識したい。
本稿のベースとなったのは、総務省が行った「全国消費実態調査」の結果である。
詳細内容がHPに公開されているので、ご興味があれば是非ご覧ください。
http://www.stat.go.jp/data/zensho/2009/index.htm
■執筆者プロフィール
杉村 麻記子(中小企業診断士・ITコーディネータ)
NPO法人 ITコーディネータ京都 事務局長
勤務先:伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
e-mail:m.sugimura@nifty.com
コメントをお書きください
あ (木曜日, 03 4月 2014 13:21)
>ここでは男性の税金や保険料が女性より多かったため、
逆転現象が生じたようだ。
つまり男の方が払う税金が多いにもかかわらず、男の収入を減らして女の収入を増やしたってことじゃねーか
何だこの酷い男性差別は