◇日本を取り巻く海外経済事情
リーマンショックでアメリカは大打撃を受けましたが、ユーロ圏もこのところ
暗雲が立ち込めています。この7月下旬にユーロ圏20カ国の銀行の資産査定
(ストレステスト)結果が発表されました。これによると査定銀行91行のうち
スペインなど3カ国の7行が資本不足を指摘されました。当初に想定された程の
不安のシナリオは回避されましたが、欧州銀行の不安心理を一掃できたかについ
ては不透明感は拭えません。
一方、同時期に米国のバーナンキFRB議長は、2009年7~9月期に始ま
った米景気の回復について「穏やかな」回復としながらも雇用、消費の低迷によ
る米景気の減速リスクに懸念を表明しました。中国など新興国の発展への期待は
大きいものがありますが、ユーロ圏、米国経済の先行き不安は、日本経済にとっ
ては円高の進行と相まって先行きについて慎重論が支配的です。
◇デフレ脱却への道程?
政府が先ごろ発表した「経済財政白書」によると、バブル崩壊から20年を経
た今も日本経済は負の遺産(需要不足、デフレ、財政悪化)がバブル後の経済の
持続的発展を妨げる要因になっています。現政権は、家計支援に軸足をおいて需
要を喚起しようとしていますが、財政事情は厳しくいわゆる期待される「成長戦
略」も内需の拡大に通じる企業の活力増進につながる供給サイド強化が不可欠で
す。
一方、専門家筋ではITの潮流は日本勢に追い風になっているとの指摘もあり、
IT産業は、ネットワーク経由でシステムやソフトウエアを利用する「クラウドコ
ンピューティング」の登場も重なり、技術の一層の発展もあり、国内産業、企業
の各方面への活性化に貢献が期待されています。
また、地方経済活性化から農工商連携事業が本格稼働してきていますし、この
事業と各地の独自性ある観光事業の開発にも期待が持てます。この連携事業、観
光事業は地域に根づいた中小企業の復元期待を膨らませています。それを助長す
る意味合いから、地方における雇用の拡充を目途に各地方の産業、企業は人材の
確保と定着、育成をこれから官民挙げて取り組むべき課題となっています。
◇実践経営を先人に学ぶ(ドラッカーの思考方法)
時代、環境が厳しいほどに企業経営のかじ取りは難しいものがあります。最近、
2005年に没した経営学者、社会学者として生涯現役を貫いた「マネジメントの父」
として世界的に著名なピーター・F・ドラッカーの書籍、解説書が広く読まれて
きています。ここではドラッカーの名言、予言で注目すべき事項を数点指摘させ
ていただきます。
・(ドラッカー思考)経営は「現在」と「将来」の両方の利益を追う必要がある。
経営者の仕事には、「事業」「組織」「人と仕事」のマネジメントがある。
・(マーケティング)変化は常に外から起こるので現場に出てよく観て、聞いて
感じ取ることが大切である。マーケティングは、お客様から事業全体を見る思
考法、またイノベーションは、新しい経済価値(売上や利益)を生み出す行為
のすべてである。
・(戦略)何かひとつとびぬけた強み(お客さまにとっての魅力)をもつことが
重要である。戦略は、「経営環境」「事業目的」「自社の強み」の3つの条件
が合致することが必要である。
・(目標管理)「複数の目標と自己規制によるマネジメント」(目標による管理)
なら、人の主体性を引き出すことができる。イノベーションは「技術革新」の
狭義にとどまるものでなく、体系的・分析的に行う「仕事」として定義し直す
と、誰でもイノベーションを起こすことができる。
・(組織マネジメント)基本に忠実な人が優秀な人材になれる。会社での人間関
係は、責任を果し合い貢献し合う関係である。
◇顧客志向~リピート客を作る~
小売業では、売上、利益増のため、顧客獲得競争は激化しています。そこから
ともすれば既存の得意先を大事にせずに新規顧客の獲得にエネルギー、コストを
かけがちですが、売上増は長続きしない場合が少なくないようです。日頃、買物
に来てくれる得意先が大切なことに気づかされてもいます。同じことをドラッカ
ーも出版社の事例で指摘しています。
情報誌COMPASS 2010春号の特集で、リピート率向上策について、その
仕組みと人材の活用で顧客を引き付けて発展を続ける2業種2社の事例を紹介し
ています。POSレジシステムの導入、ホームページの作成など、さらに今後、
情報システムの定着とその活用に意欲を燃やしている実態が綴られています。各
種データの活用のためには経営方針に即したデータの活用をさらに進める意向の
ようです。顧客情報を取扱うのでセキュリテイなど情報の管理面が今後解決すべ
き課題であるとIT利活用に意欲を見せています。
■執筆者プロフィール
玉垣 勲
IT経営代表
中小企業診断士 社会保険労務士 通訳案内士(英語 ファイナンシャル・プランナー
メールアドレス;ANB51755@nifty.com
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