第5次IT戦略対応で中小企業間のIT格差はどうなる!! / 恩村 政雄

2001年に発足したIT戦略本部が、6月22日に第5次IT戦略(2020年度まで)として30項目を3段階(短期・中期・長期)に分けて実施時期を発表・報道された。主なものとしては、(1)学校でのデジタル教材を普及させ情
報端末を持たせる教育の展開を図る。(2)国民が各種の証明書などを電子申請するための国民ID制度は、個人情報保護法などITを活用する上で障害になっている規制・運用を見直し、解決するために、情報通信技術利活用促進一括化法案(仮称)を検討したうえで運用を開始する。

第5次IT戦略の報道に接し、ITコーディネータ制度発足(2001年)以来2009年12月末現在のITコーディネータ認定者は9,037名、資格保有者は6,516名と成果がみられるだけに、改めて「IT経営」についての理解を確認するために、2005年6月にIPA発行の「IT経営のススメ」をひもといてみる。
「IT経営のススメ」の冒頭には「ITは使い方によって大きな力になりますが、それ自体は単なる道具にすぎません。ITを活用するのは人であり、ITの活用によって利益を得るのもお客様や社員という人間です。人間的な温かみを忘れたIT活用は本末転倒。まずは企業のリーダーが魅力あるヒトとなり、有効にモノ・カネ・情報を活用することで、初めてIT活用は成功するものです。と記述され、次にITの有効活用のステップとして、
第1ステップ IT経営への気づき -10年後も元気な会社であるために-
第2ステップ 業界の将来を予測する -業界の先を読んで対応していく-
第3ステップ 自分の会社の能力を知る-成熟度チェックしレベルを知る-
第4ステップ IT経営で課題を解決するー儲かる企業、勝ち残りの企業へ-
の章立で、チェックすべき点や課題対応方法について具体的に記述されている。
 
特に、経営課題解決に当たりIT活用領域として下記6領域が示されている。
・新ビジネスモデル構築へのIT活用
・営業マーケティングへのIT活用
・経営意思決定の合理化・スピード化へのIT活用
・仕事の仕組み改革と連携・統合化へのIT活用
・コミュニケーション高度化へのIT活用
・人材活用高度化へのIT活用

第5次IT戦略本部方針がIT活用インフラ整備・充実から、経済や生活全般に亘り、より一層のIT活用基盤の構築を志向していることは鮮明である。既に中小企業においては、経営活動の中軸にITを据えている企業と、ITを横目で見ている企業とでは、経営力にITが大きなインパクトを与えていることが明瞭であるが、今後においてもIT活用レベルで経営力格差はますます広がるものと容易に推察される。
一方、ITコーディネータにおいても、ITの技術革新や機能の高度化は日進月歩の勢いで進んでいるだけに、ややもすると最新技術の習得、新たなスキームの構築に目が向き、何のためのIT導入かを失念していると思われる様子も散見される。

ITコーディネータの役割(ミッション)を今一度振り返ることが、中小企業の次なる発展の支援につながるとの思いを強く持つ。
「蟹は自分の甲羅に合わせて穴を掘る」といわれているが、IT導入の中小企業のITリテラシー度を勘案し、それぞれの中小企業の経営力に応じたあるべき到達の仮説を示し、中小企業が今よりも少し手を伸ばせば届くIT活用提案を行うことが「IT経営」の実現の近道かも知れない。
ITコーディネータ発足10年になんなんとする節目を迎える今日において、ITコーディネータとして中小企業の経営改善・改革にどのようにお手助けできるかを考える好機と思われる。


■執筆者プロフィール
O・B・C・C(経営コンサルタンツ)

 恩村 政雄
 〒614-8046 京都府八幡市八幡砂田2-45
電話/FAX 075-981-3830