エコへの取り組みついて/西田 則夫

 最近、テレビ、新聞、広告等においてエコという文字がない日がないくらいエ
コ関連の情報が氾濫しています。家電エコポイント制度は、家電の買い替え需要
を喚起していますし、エコカー減税では新車への乗り換えを促進しています。
私事ですが、息子の自動車購入に際しては、減税のあるなしで判断して、中古よ
りもお得感のある新車を選択しました。

 そのような世間情勢で、IT関連でもエコへの取り組みが盛んになってきてい
ます。身近なところで、プリンターでの印刷について、次のような取り組みを紹
介します。私の所属する会社では、トナー代が年間26,215千円かかっていますが
節約用の印刷ソフトウェアをインストールすれば、年間10,486千円(半分以下)
に削減可能であることが算定されており、ツールの導入を推奨しています。
さらなる節約として、プリンタドライバの「トナーセーブ」機能をONしたり、
2アップ以上、または両面印刷や、印刷は極力避けてプロジェクターや大画面デ
ィスプレイの利用に取り組んでいます。

 顧客のサーバを預かり、インターネットへの接続回線や保守・運用サービスな
どを提供する施設であるデータセンターにもエコを意識したものがあります。
イギリス北西部にあるHP社のデータセンターがそれです。どのようなものかと
いうと、コンピュータの冷却用に外気を全面活用し、通常よりも40%少ない電
力で稼動するデザインを採用しています。注目すべき点は、外気取り入れを基本
とし、空調は補助とした冷却方式で、床下高は5mあり各データ・ホール毎に8
台づつ設置された直径2.1mの巨大な低速ファンが外気をゆっくりと取り込む
構造となっています。このデータセンターは緯度が樺太と同じで、年間24度以
上になることがないため、このような設計が可能となったとのことです。

ちなみに、データセンターのエネルギー効率を示す指標にPUEというものがあ
り、データセンター全体の消費電力÷IT機器による消費電力で表します。最も
効率が良いデータセンターは,それが1.0となります。1.0とは、データセ
ンター全体の消費電力と、IT機器による消費電力が等しくて、データセンター
に供給される電力をすべてIT機器が消費するため無駄がないことになります。

 グーグル、マイクロソフトやアマゾンなどのクラウド・コンピューティング専
用のデータセンターは高率のPUEを達成していますが、顧客からのIT機器を
預かるセンターとしてのアピール度は高いものとなっています。

 インターネットの普及によりWikipediaにみられるように著作者が無償で知識
を提供しあう仕組みができており、環境面についても企業が環境に役立つ特許を
無償公開する団体もできています。特許の内容としては、再生利用が可能な梱包
材に関するもの、廃水処理に関するもの、河川や池で利用できる水質向上ブロッ
クに関するものなどがwebサイトで公開されています。ただ、企業が特許を無
償公開して有効活用するには、どの特許を公開するかを組織的に決定する仕組み
の整備が今後必要となります。

 エコカーブームの自動車業界では、独フォルクスワーゲンが、「環境を考える
ことは難しくない、むしろ楽しい」とのメッセージを広めるキャンペーン、「エ
コは楽しい」街頭プロジェクトを開始しています。たとえば、「エレベーターを
使わず階段を登る」というテーマでは、ストックホルム市内の地下鉄駅の階段を
ピアノの鍵盤状で音階も出る仕組みに改装し、音階が出る面白さから、歩行者が
エレベーターを使わずに階段を登るように仕向けた「地下鉄ピアノ階段」があり
動画サイトにも投稿されて多数のアクセスがあったようです。ほかに、ゴミを入
れると深い井戸に物が落ちたような電子音が出る「最深ゴミ箱」などがあります。

 エコの取り組みついては賛否両論があるものの、自ら意識して個々人が必然的
にエコ活動を起こす傾向となっています。IT導入の際には、環境面を考慮した
提案、コンセプトを意識することが、必要となる時代になってきたと思います。


■執筆者プロフィール

西田 則夫(Nishida Norio)
情報処理プロジェクトマネジャー、ITコーディネータ
マネジメントの経験を顧客満足の向上に役立てたいと思います。
Norio.Nishida@csk.com