アイ,ロボット ~サーチエンジンと仲良く~/上原 守

 この映画の原作はアイザック・アシモフの「われはロボット」だそうですが,

原作にはこういったストーリーはありませんでした。「鋼鉄都市」という作品が

あって,そちらの方がモチーフとして近い感じです。

 ところで,アシモフの「ロボット三原則」は,以下のようになっています。

第一条 ロボットは人間に危害を加えてはならない。また,その危険を看過する

    ことによって,人間に危害を及ぼしてはならない。

第二条 ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし

    あたえられた命令が,第一条に反する場合はこの限りでない。

第三条 ロボットは前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり,自己

    をまもらなければならない。

 これは,要するに「安全」「便利」「長持ち」の三要素で,家電製品とかでも

同じですね。

 

 拙文をお読みの中には,ホームページを運用されている方もいらっしゃるかと

思います。今ではホームページはあまりに大量にあるので,Yahoo!やGoogleで,

自社製品をキーワード検索しても,自社のサイトがどこにあるか分からない方も

居られるのではないでしょうか?

 「知られていないもの」は「存在しないもの」と同じなので,今回はSEO対

策について簡単に触れたいと思います。

 

 インターネットにおける検索エンジンは,ロボットとかクローラー(crawler:

這い回るの意味,水泳のクロールと同じ)と呼ばれるソフトウェアが,インター

ネット上の膨大なホームページを,日々巡回してデータを集めています。

 集めたホームページはランク付けされ,またホームページ内のデータからはキ

ーワードが抽出(日本語は単語の間にスペースが無いので,分ち書きのロジック

が必要です)され,ユーザが入力したキーワードでの検索に提供されます。

 ここではSEO対策として,検索エンジン側から見た場合に,どのようにホー

ムページを作成して運用すれば良いかの「三原則」を考えて見ます。

 

■第一条 SEO対策は,行儀良くしなければならない。

 ここでいう「行儀良く」とは,人間から見たときの「見た目」だけでなく,ロ

ボットや検索エンジンから見たときの「見た目」を意識するということです。

 簡単に言えば,W3C勧告に準拠する(HTML4.01やXHTML1.0の仕様に則ったペ

ージを作る)という意味です。XHTML1.0の仕様に準拠することで,ロボットから

見て分かりやすいだけでなく,アクセシビリティの向上にもつながります。

 具体的には,以下のような事を指します。

1.DTD宣言を正しく書く。

2.フレームは使わない。

3.<title>タグ,<meta>タグ,<h>タグ等の意味を理解して,効果的に使う。

4.<img>タグのalt属性,title属性を活用する。

5.レイアウトの整形はCSSで行い,整形のためだけの<table>タグは使わない。

 言ってみれば,W3C勧告はインターネット上のマナーブックです。W3C勧

告に従った形のホームページは,目の不自由な方向けに読み上げソフトで読み上

げることも可能になりますし,ロボットからも読みやすくなります。

 frame要素は,現状でも「必要最小限が望ましい」となっていますし,次の規

格であるXHTML2.0ではframe要素自体が定義されていません。また,フレームを

使うと,最初にロボットが見つけるのはトップ部分だけです。この部分には,普

通は文章が少なく,検索の対象としては貧弱です。

 検索でヒットさせたいキーワードは<title>タグ,<meta>タグ,<h>タグに上手

く入れる(入れすぎてもいけない)ようにホームページを作ることで,キーワー

ドのヒット率を高めることができます。

 なお,現状ではメジャーキーワード(例えば「京都」とか)でトップに近くな

ることは至難の業です。複合キーワードや,マイナーキーワードでの上位を狙い

ます。

 

■第二条 SEO対策は,絆を大切にしなければばらない。

 ホームページの歴史は,学術論文を公開することから始まっています。

 学術論文の場合には,他の論文から「引用」されることがあります。簡単に言

えば「良い論文」から多く引用されている論文は「良い論文」であると考えられ

るので,多くのサイトからリンクを張られているページは「良いページ」と判断

されます。とはいっても,他の人に頼んで無理にリンクを作ってもらって,謝礼

を払うのは考え物です。謝礼をもらっている事が分かれば,そのサイトは一気に

ランクダウンする可能性があります。こうなると「悪いサイト」からリンクを張

られているということで,共倒れになります。

 自社のホームページで,ブログを書かれている方も多いと思いますが,単にブ

ログを書くだけでなく,ブログの中から自社のページへのリンクを張るようにす

ることでも,「絆」を作ることができます。

 ただし,あまりに複雑なリンクや関係のないリンクを作る(例えば,ブログの

ページから全ての商品のページへリンクする)と,最近のロボットは賢いので,

無理なSEO対策をしていると判断され(スパム扱いされる)て,かえって逆効

果になります。

 

■第三条 SEO対策は,気長に,かつコマメにしなければばらない。

 インターネット上のホームページは,毎日沢山作られていますが,消えていく

ページも多いのが現実です。一定期間以上続いているホームページは,それだけ

で評価が上がります。

 また,本来は消去するべきページが,消されないままで放置されている場合も

大量にあります。一定期間以上更新が無いと,放置されていると判断され,一気

にランクダウンします。最低限,週に1回はサイト内で更新が必要です。ですか

らブログのページも,可能なら自サイト内に置いておく事をお勧めします。

 また,商品毎にユーザコメントを載せるのも効果があります。更新回数が飛躍

的に増えますし,Web2.0のコンセプトの一つ「集合知」「リッチなユーザ体験」

にも合致します。

 検索エンジンのランクは,直ぐには変わりません。一定期間毎(週に2~3回)

にランクと成約率(コンバージョンレート)をチェックして,気長にかつコマメ

に対策を取っていくことが必要です。

 

 上記の三原則は,プラス(ランクアップ)側への対策です。長くなりますので

ここでは触れませんが,やってはいけないマイナス側の原則もあります。

 

 以前,私がブログをやっていたときのことですが,上記の原則とプラスアルフ

ァの要素に従ってSEO対策をやってみた結果,あるキーワードでGoogleで10

位以内に入ったことがあります。ほとんど毎日更新して,半年ほどかかりました

が,更新を止めたら直ぐにランクダウンしてしまいました。

 以前は,SEO対策として,背景色と同じ色でキーワードを埋め込むようなテ

クニックが流行りましたが,今ではこういったことをすると「有害」なページと

してランクダウンしてしまいます。

 

■終わりに

 「行儀良く」「絆を大切に」「気長に,かつコマメに」と言うと,結婚生活の

コツのようになりました。既婚者の方の意見を伺いたいところです。

 いずれにせよ,SEO対策を「サーチエンジンで上位に行くこと」とだけ捉え

るのは,間違いです。いくらサーチエンジンで上位になっても,成約に結びつか

なければ意味がありません。広い意味で「自社の製品を求めているユーザに適切

な情報を提供すること」と捉えて,サイト全体の戦略を考え,ユーザの気持ちや

操作に添ったユーザインタフェースを提供することが大事だと思います。

 第一条のところで「複合キーワードや,マイナーキーワードでの上位を狙う」

と書きましたが,自社の製品を求めている人が,どういったキーワードで検索し

てくるかをユーザの気持ちになって考える必要があります。こういった場合には

ペルソナを使ったマーケティング等が有効です。

 小手先のテクニックに流れることなく「サイトを育てる」意識を持って,取り

組むことが重要だと思います。

 ただし,どの検索エンジンも仕様を公開していませんので,これらの原則に従

ってもランクが向上することを100%保障することは出来ません。

 Googleの場合,下記のようなツールが最近公開されました。これによって,サ

イトを診断することで,Googleへの最適化は(多少は)進められると思います。

 

・Googleウェブマスターツール

 https://www.google.com/webmasters/tools/

 

 また,Yahoo!は,昔は登録型の検索エンジンでしたので,まずはYahoo!ディレ

クトリに登録することをお勧めします。

 

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■執筆者プロフィール

 

上原 守 harvey.lovell@gmail.com

 ITC CISA CISM

IT関連の資格は10種類くらい持っています。エンドユーザからシステム部,ソフ

トハウスでの経験を活かして,上流から下流まで,幅広いソリューションが提供

できることを目指しています。