企業内教育は、経営のニーズに基づいて組みたてられるものです。企業をとり
まく社会・経済情勢の変化、市場のニーズや雇用形態の多様化などに対応するた
めに、企業の教育課題が設定されることになります。
その課題は、企業目的→環境の変化+自社の保有能力→経営戦略の立案→組織
の編成→要員の配置→教育ニーズの発生というプロセスで設定されるのが理想で
す。即ち、教育課題は、経営戦略に沿ってつくられるものです。
企業内の人材育成とは、企業が求める能力の開発を進めることで、企業が求め
る能力とは、企業という組織の一員として、企業目的の達成に役立つ能力のこと
で、学校等では個人の教育にウエイトがおかれているが、社員の教育では、「組
織の一員として」の能力開発に主眼がおかれています。
目的を達成するためには、自分の任務を遂行する専門性や、最期までやり遂げ
る責任感が求められ、これらをまとめて「職務遂行能力」といわれ、コミュニケ
ーションで代表する「対人能力」、いろいろな障害等を克服し新しい展望を展開
する「問題解決能力」が必要となります。
社員の能力開発は、経営戦略の一翼を担うもので、長期的視点に立って、計画
的に行われなければなりません。企業の人材育成方針に基づいて、個々の研修を
有機的に関連づけ体系化することが大切である。
その体系化の留意点として次のようなことがあげられます。
・経営理念やトップの示す人材育成方針を具体化したものであること。
・企業人の能力開発の基本は自己啓発であるので、社員各自の自己啓発意欲の促
進を図り、能力向上の動機付けを行う。
・経営戦略に対応した人材育成計画を盛り込む。
・各研修の目的を明確化し、他の研修との関連付けをはっきりさせ相乗効果が期
待できるものにする。
・組織や人事制度との関連付けも確認し、能力開発と組織・人事は補完関係にあ
るので研修を効果的に進めるためには、それらのバックアップが必要である。
・新入社員の導入教育からトップ研修までの一貫した階層別コースを設定する。
・職能別は、高度の専門知識・技術を与える内容にするが、変化の時代は陳腐化
が激しいので、この点からの配慮が望まれる。
・研修は職場の教育ニーズを反映したものにすることですが、社員が望んでいる
研修テーマを取り上げると最も効果が上がることも考慮する。
・集合教育だけでなく、社員個人の個性・適正の開発にポイントをおいた個人別
キャリア形成のプランも盛り込む。
・組織を化成化するため社員個人だけでなく、部や課などの組織全体のレベルア
ップを対象としたものも含む。
・能力開発の推進機関を明確に定め責任と権限が明示されていること。
・人材育成計画は、適切な状況認識の上で立てられているが、どんな素晴らしい
計画でも実現可能なものでないと意味がない。
体系の具体的内容は階層別と職能別の二つの面から分類することが出来る。
階層別は経営者から新入社員に至るピラミッド組織を階層毎にヨコ割りしたも
のである。職能別は営業や生産などの職能部門別に組織をタテ割りにしたもので
す。能力開発の方法によって、集合研修とOJTと自己啓発の3つのカテゴリー
に分けることも出来ます。この2つの分類はお互いに補い合う関係にあり、階層
別、職能別ともこれら3つのカテゴリーのよる能力開発が行われています。
企業内の人材育成は、経営戦略を遂行するのに必要な能力の開発を目的として
おり、教育は、経営活動を支える重要な機能であり、そのためトップや各層の管
理、監督者から経営課題や職場の問題解決について、教育スタッフに対してさま
ざまな要望が寄せられますが、教育スタッフの基本的役割は次のとおりです。
・人材育成の専門スタッフとして、社員の能力開発が効率的に推進されるよう一
連のスタッフ業務を担当。
・教育ニーズを発見し、企業内教育の方向付けを行う。
・教育の専門家としてトップの方針を理解し、トップや管理、監督者に対して助
言、援助をおこなう。
・階層別、専門別教育などの集合研修の立案、実施し社外の研修コースを選択し
社員の派遣などOFF-JTについて総合的に検討、推進すること。
・全社に能力開発の関する啓蒙活動を行い社員の自己啓発やキャリア形成に関す
る意欲を高めるよう促すことです。社員の能力開発は自己啓発が基本、そのこ
とを全社員に徹底し、自己責任で自己能力開発をするよう認識を深めさせるこ
となど幅広い役割である。
キャリア形成の支援関係の仕事をしており、企業を訪問している中で、人材育
成や能力開発についての企業内教育についていろいろお尋ねしており、自分で学
んだことを提案し、更に徹底して頂くよう支援をさせていただいています。
■執筆者プロフィール
川島 昇 (かわしま のぼる)
川島ビジネスソリューション
中小企業診断士、ITコーディネータ、
ISO9001審査員補、経営品質協議会認定セルフアセッサー
Tel&Fax:075-611-6110 090-5164-7865
E-mail :n-kwsm@s4.dion.ne.jp
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