ERM(エンタープライズリスクマネジメント)の取組みは大丈夫ですか / 恩村 政雄

1. 東京証券取引所に107億1200万円の賠償判決が下る

 経営者の皆様、覚えておられますか。丁度4年前の12月8日、奇しくも先の大戦開戦日とは年こそ違いますが同月同日に、証券業界は驚きと、その結果の重大さに震撼。

 その事件とは「みずほ証券が人材派遣会社ジェイコムの株式売却で、61万円で1株とすべきところを1円で61万株と誤って発注端末に入力、入力者はすぐに気がついたが、東証の売買システムの不都合と重なり売買停止措置が遅れ、莫大な損失が発生。みずほ証券は東証に415億円の損害賠償を提訴。地裁は、みずほ証券の自己責任分を差し引き150億円を損害額と認定、内7割を東証、3割をみずほ証券の責任と12月4日判決」

 この事件は元をただせば、みずほ証券担当者のケアミスと東証の売買システムの不具合とが重なりあったことが、結果として経営の根幹をゆるがす事態を招来したものであるが、このような担当者のケアミスと情報システムの不具合が重なり大きなトラブルに発展することは、企業活動ではよくあることである。

 

2. リスクマネジメント対策は十分ですか

 みずほ証券・東証事件は別世界の出来事というのではなく、他山の石としてもう一度、貴社のリスクマネジメント対策を点検してみませんか。

 企業活動にはさまざまなリスクが発芽を待っています。

 情報システムセキュリティの不十分な対策、掛け声だけのコンプライアンス対策、内部統制の不備からくる内部不正の発生等々により経営活動が齟齬を来たすリスクが数多く潜んでいますが、経営者の皆様は費用対効果を御旗印にして対策を先送りにし、火の粉が降りだしてやっと対策に乗り出すケースをよくみかけます。

 

3. 社会はリスクマネジメント対策を要請している。

1) 会社法の改定により会社全般でのリスク管理の体制確立及びその情報開示が義務づけられている。

2) 市場からは企業の事業継続、安定収益が期待されるだけに、不確実性に対するリスクマネジメントへの要請がより高まっている。

3) リスクマネジメント対策コストに対する適正性、効果性、ムダ排除等よりコストの透明性(オープン化)が一層求められている。

4) 海外進出を目指す企業にとっては、リスクマネジメントは常識。さらにリスクマネジメント対策の有無が企業の信頼性、格付けに大きく影響している。

 

4. ERMが期待されている理由
 ERMとは直訳すると「エンタープライズリスクマネジメント」であるが、一般的な用語だけに、下記のようにいろいろな解釈が生じています。

 

1) あるリスクのマネジメントを特定部門だけが取組むのではなく、全社的に取組むことがERM。

2) 財務内容の信頼性確保だけでなく、業務の有効性・効果性の確保、コンプライアンスのために内部統制を充実・強化することがERM。

3) 経営戦略の目的達成において生じる不確実性リスクをマネジメントするのがERM。

4) 個別のリスクマネジメントを横断的に評価し、全社統合的にマネジメントすることがERM。

 

 その人・企業が置かれた立場や考え方によって、ERMの解釈(定義)はまちまちだが、要は「その企業にとってもっとも納得感のあるものを検討し実行すること」です。

 

5. ERM(エンタープライズリスクマネジメント)の取組み(例)

 参考として、具体的な取組み例を述べると下記手順となります。

 

1) 最初に、企業内に存在する個別リスクマネジメントを棚卸しし、全体を把握する。

2) 棚卸しした個別リスクマネジメントごとにコストを算出し、全体コストを把握しその妥当性を評価する。

3) 全体コストを個別リスクマネジメントごとに再配分する。

4) リスクマネジメントの体制・方法を見直し、組織・人員、IT活用の適正化を図る。

5) リスクマネジメントPDCAを回し、コストを継続的に評価し効果を高める、(PDCAとは、計画ー実行ー結果ー評価・次計画に反映という経営サイクルのこと)

6) 自社のERMの取組みを取引先、金融機関、従業員などのステークホルダーに情報発信し、市場における自社格付け評価を高め、本業活動を支援する。

 昨秋のリーマンショックに端を発した世界的不況の回復度合やデフレ的市場の浸透等からは、経営の先行きが見えにくいだけに、経営計画及び活動の見直し等にあわせて、自社に適ったERM活動を研究・取組むことが望まれます。

以上


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