電子帳簿の保存について/中川 秀夫

インターネットの普及、ブロードバンド化により中小企業においても電子帳簿
保存法によって、会計帳簿、計算書類等や証憑書類などの電子データによる保存
管理を行い、書類の保存にかかる経費や、経理業務処理の大きな負担軽減が実現
可能な状況になってきました。


そこで、今回は電子帳簿保存法についてご説明させていただきます。
電子帳簿保存法の正式名称は「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書
類の保存方法等の特例に関する法律(平成十年三月三十一日法律第二十五号)」
です。


〔電磁的記録(電子データ)保存による省力化〕

ネットde会計のようなインターネットを使ったASP経理システムを利用したり、
会計ソフトをパソコンにインストールして帳簿を作成して決算を行い、国税庁の
e-taxシステムにより申告すれば、全てペーパーレスで処理が可能です。
しかし、このように電磁的記録(電子データ)で作成された会計帳簿、計算書類や
申告書であっても、原則は紙で保存しなくてはなりません。

電子帳簿保存法の承認を受けることで電子的に作成した会計帳簿、計算書類や申
告書を電磁的記録(電子データ)のままで保存が可能となります。

電磁的記録による保存を行う場合には、あらかじめ所轄税務署長に対して申請書
を提出し、承認を受けることが必要です。また、この申請書は、電磁的記録によ
る保存を行おうとする日の3月前の日までに提出する必要があります。


電子帳簿保存法関係承認申請の手続種類は次のとおりです。

(1) 国税関係帳簿の電磁的記録等による保存等の承認申請
(2) 国税関係書類の電磁的記録等による保存の承認申請
(3) 国税関係書類の電磁的記録によるスキャナ保存の承認申請


会計帳簿、計算書類等の保存期間は10年間です。
(会社法第432条第2項、第435条第4項)
保存すべき会計帳簿は総勘定元帳、仕訳帳、現金出納帳、売掛金元帳、買掛金
元帳、固定資産台帳、売上帳、仕入帳など、保存すべき計算書類等は貸借対照
表、損益計算書、棚卸表、注文書、契約書、領収書など多様なものがあります。
全てペーパーレスで保存できれば、かなりの省力化となります。


〔電子取引をした場合の電磁的記録の保存方法 〕

電子取引をした場合には、その電子取引に係る電磁的記録(電子データ)を、
一定の要件を満たして保存する必要があります。電子帳簿保存法では、電子帳簿
保存の承認の適用有無にかかわりなく、すべての事業者がその電子取引に係る電
磁的記録(電子データ)を保存することが義務付けられました。
電子取引に係る電磁的記録(電子データ)を保存することができない場合は、プ
リントアウトして電磁的記録(電子データ)を出力することにより作成した紙の
書面で保存してください。
 
電子取引とは、取引情報(取引に関して受領し、又は交付する注文書、契約書、送
り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項。)の授受
を電磁的方式により行うつぎのような取引をいいます。

(1) いわゆるEDI取引
(2) インターネット等による取引
(3) 電子メールにより取引情報を授受する取引(添付ファイルによる場合を含む)
(4) インターネット上にサイトを設け、当該サイトを通じて取引情報を授受する
  取引


■執筆者プロフィール

中川 秀夫(なかがわ ひでお)
税理士、ITコーディネーター、CFP(1級F P技能士)、
不動産コンサルティング技能登録者
IT投資に関する支援を新機軸に経営計画、

建設投資、不動産に関する業務サポートを展開中 。
お問合せ先:naka.h@dream.com