経済危機対策(中小企業への支援策)/竹内 政明

  中小企業が経済危機を乗り越えるための支援策として、税制による支援、融資
保証や助成金の拡充などが実施されています。

1.税制による支援(法人税)

(1)中小企業の軽減税率の引下げ
 中小法人等の平成21年4月1日から平成23年3月31日までの間に終了す
る各事業年度の所得金額のうち、年800万円以下の金額に対する法人税の軽減
税率がこれまでの22%から18%に引下げられます。
 
(2)欠損金の繰戻し還付制度 
 中小法人等の平成21年2月1日以後に終了する各事業年度において生じた欠
損金については、欠損金の繰戻し還付制度が適用できるようになります。これは、
欠損金が生じたとき、その欠損金額を前期の所得に繰り戻して、すでに納付済み
の法人税額を還付請求することができる制度です。一部の法人を除いて平成4年
から適用が停止されていましたが平成21年度税制改正で復活しました。

・還付請求できる金額の計算
前事業年度の法人税額×欠損事業年度の欠損金額/前事業年度の所得金額

(注)中小法人等とは
  資本金が1億円以下である普通法人、公益法人等、協同組合等 など

(3)交際費の定額控除限度額を600万円に拡大
 交際費等の損金不算入制度について、資本金1億円以下の法人の定額控除限度
額が400万円から600万円に引き上げられます。

・定額控除限度額に達するまでの交際費の金額の90%を損金算入することがで
きます。

2.資金繰りの支援

(1)緊急保証制度(信用保証協会)の拡充
 緊急保証の規模が20兆円から30兆円に拡大され、据置期間が1年以内から
2年以内に延長されました。また、無担保で8,000万円を超える保証の相談
にも対応されます。

(2)セーフティネット貸付の金利引下げ等
 日本政策金融公庫と商工中金のセーフティネット貸付等の規模が10兆円から
17兆円に拡大され、元本返済猶予など既往債務の条件変更にも対応するとして
います。また、無担保、無保証人融資や関連企業の倒産により経営に困難をきた
している中小企業への金利の引下げが行われました。

(3)マル経融資の融資限度額の引上げ等
 小規模事業者経営改善資金融資(マル経融資)が、次のように拡充されました。
ア、貸付限度額 1,000万円から1,500万円
イ、貸付期間
 ・運転資金 5年(据置6カ月)から 7年(据置1年)
 ・設備資金 7年(据置6カ月)から10年(据置2年)

(4)倒産防止共済の一時貸付金の金利引下げ
 中小企業倒産防止共済の加入者が掛金納付月数に応じて利用できる一時貸付金
の金利が1.5%から1.0%に引下げられました。

・平成22年3月31日までに(独)中小企業基盤整備機構が受け付けたものが
対象となります。  
 
3.雇用維持のための助成金

(1)緊急雇用安定助成金の助成率の上乗せ
 景気変動などによって生産量が減少し、事業活動の縮小がやむを得ないときに、
従業員を解雇せずに、休業等により雇用を維持した場合に、休業手当相当額の8
割が支給される中小企業緊急雇用安定助成金の助成率が8割から9割に上乗せさ
れます。

(2)派遣労働者1人につき45万円の助成金支給
 新たに残業削減雇用維持奨励金が創設され、有期契約労働者、派遣労働者の雇
用を維持するために、残業の大幅な削減を行っている事業者に助成金が支給され
ます。
ア、有期契約労働者1人につき30万円(年間)
イ、受け入れている派遣労働者1人につき45万円(年間)


■執筆者プロフィール

竹内政明(たけうち まさあき)
竹内政明税理士事務所
代表 税理士・ITコーディネータ
(TKC全国会会員・電子申告、書面添付推進事務所)
TEL075-863-3377
FAX075-863-3378
e-mail masaaki@oak.ocn.ne.jp