「ピンチはチャンス」 -今こそ経営戦略・戦術の立案を-/柏原 秀明

 ■はじめに
2008年9月に端を発した米国リーマンブラザースの破綻を引き金に,「百年に一
度」の世界同時不況に突入したことはご承知のとおりです。
急激な景気悪化は,輸出依存の高い製造業の主要な業界(自動車,家電,カメラ,
コンピュータ,半導体,液晶等)を直撃し,下方修正を繰り返しています。日本
の強みである垂直統合型製造業(ピラミッド構造型)では,下請け企業への影響
が特に深刻な事態になっています。
具体的な現象としては,「派遣切り」,「リストラ」,「操業時間短縮による賃
金カット」などとして現れ,景気はスパイラル状に悪化しています。
しかしながら,過去の経験から景気は必ず回復するはずです。このような「ピンチ
(危機)」の時にこそ,現状を把握し将来に備えたビジネスを考える「チャンス
(好機)」と捉えるべきです。ここでは,この「ピンチをチャンス」に変えるい
くつかのポイントについてお話します。

■現場社員のポジティブ思考の高揚
何れの企業も各年度に売上・利益目標を設定し,その計画に基づいて企業活動を
実施しています。
このことは,企業経営を行う側にとっては当然のことです。しかしながら,この
「向かい風の景気」では,社員に売上・利益目標を過度に徹底することは,縮思
考を助長することになります。むしろ売上・利益目標の徹底ではなく,「その
時々に大事な動き」を目標に掲げ,社員に考えさせることの方が得策です。例え
ば,現場に近い社員ほどお客様と接触する機会が多いはずですから,「お客様の
声」を聞き違う発想の「ポジティブ思考」でより良い活動を,社員自ら発案・実
行するよう高揚することです[1]。

■客の客
 ビジネス活動では,直接の「お客様」のニーズを把握・想定しそのニーズに合
った製品・サービスを提供することをポイントにしている場合が多くあります。
しかし,この直接の「お客様」のニーズの把握・想定だけでビジネス活動は成功
するでしょうか。必ずしもそうではありません。ビジネス活動に成功する為には,
もう一歩踏み込んで,提供する製品・サービスが,直接のお客様がお持ちの「お
客様」へどのような付加価値提供になるかを予測・推測することが大事です。
その付加価値が高いほど製品・サービスを購入していただける確率が高くなるは
ずです。すなわち「客の客」を読むということになります。

■経営戦略・戦術の立案
 ピンチの状況では,緊急事態が続き「火急のことのみ」に集中しがちです。
言い替えれば「木を見て森を見ず」の状態です。この状況を早く乗り越え脱却す
るためには「経営戦略・戦術」の立案・実行の準備を進言します。
即ち不景気状態から好景気状態に戻ったことを想定し事前準備を先行することで
す。これにより,景気回復の兆しが見えたときに競合他社よりも早く,立案した
経営戦略・戦術の実行により着実に成果を獲得できるはずです。
この経営戦略・戦術立案時には,先見性のあるビジネス・経営・技術・ITなどの
経験豊富なコンサルタントの起用を進言します。

■おわりに
現在は「縮思考」の真っ直中です。しかし,この「百年に一度」の世界同時不況
だから仕方がないでは済みません。景気が回復した時には,業界のプレイヤーは
様変わりしているはずです。そのプレイヤーとして残るためには,今こそ「経営
戦略・戦術」の立案を最優先で着手し「ピンチをチャンス」に変えていただくこ
と を期待致します。

参考資料
[1] 横山弘一,「数字の目標に意味はない社員が考えてこそ強い会社」,日経 
ビジネス,p.1,2009.2.16


■執筆者プロフィール

柏原 秀明
NPO法人 ITコーディネータ京都 理事

ITC,技術士(総合技術監理・情報工学部門),APECエンジニア
ISO27001審査員補,ISO9000審査員補,システム監査人補


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コメント: 1
  • #1

    Albina Brin (水曜日, 01 2月 2017 02:25)


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