クラウドソーシングの可能性/大塚 邦雄

最近聞く言葉に「クラウドソーシング」があります。これは自社の業務を社外の
不特定多数の群集(Crowd) に委託することです。社外の専門的な知識を持った
特定の人や組織に委託するアウトソーシングと異なりメリット・デメリットも多
くあります。
クラウドソーシングは不特定多数を対象にすることから、ビジネス上では先ず信
頼性・安全性に対する不安があり、現実的にはいろいろ乗り越えなければなりま
せんが、企画・設計・製造を進める方法の一つとして紹介します。

従来ソフトウェアの開発の世界では、UNIXなどのオープンソースと呼ばれている
のがこのクラウドソーシングにあたります。そこではクラウドといってもそれな
りに専門的な知識を持った技術者が低賃金若しくは無償で、自分の自由な時間で
参画します。例えば製品開発のコンセプトをブレインストーミングしてアイデア
を出し合い、優秀なアイデアを取り上げて実際の製品をデザインしていくなど一
連の作業をサイトを使って行うことが出来ます。事例としてはソフトウェアの開
発を例に挙げましたが、この手法はソフトウェア開発に限ったものではなく、市
場調査・製品開発のあらゆる場面で顧客あるいは消費者の参画にニーズを反映す
ることも可能となります。
アメリカのあるベンチャー企業の事例ですが、電動スポーツカーの家庭用充電シ
ステムの開発するにあたって、電気配線や負荷などの情報を同社の所有するブロ
グの読者に提供してもらい、充電システム開発に必要な情報を収集しました。
その他、パソコンメーカのデルはパソコンに搭載するOSをデルのクラウドソー
シング・コミュニティである”Dell IdeaStorm”を通じて消費者の声を反映させ
ています。クラウドソーシングは単に情報収集だけでなく、必要に応じてアイデ
アを実現する手段にも使われます。

しかし、メリットだけではありません。社外の不特定多数の知恵を借りることは
当然そのリスクもありますので、そのリスクを如何に低減させてメリットを享受
するかを考えなくてはなりません。例えば議論をその目的に合わせて誘導しない
と思わぬ方向に進んでしまったり、そもそも議論の参加者の適性、報酬、知的財
産権の帰属などの基準などを決めておく必要もあります。また、企業秘密に関わ
る部分の取り扱いなど課題は多いですが、中小企業にとって多額の研究開発費を
かけることが困難な場合に、顧客あるいは消費者のアイデアを広く、しかも低価
格で収集することは大いに役立つと考えられます。ネット社会を上手に活用する
方法を考えられてはいかがでしょうか。



■執筆者プロフィール


大塚 邦雄
情報処理システム監査技術者、ITコーディネータ
30年にわたるシステム開発経験をもとにIT化を支援します。
e-mail:k_ootuka@mbox.kyoto-inet.or.jp