ユニバーサルデザインの広がり/松井 宏次

紺碧の海、白く輝く太陽、黄色い大輪のヒマワリ、さまざまな夏の色。子供の頃
と大人になってからでは、心にとまる夏の色も違ってきているかも知れません。
いくつになっても夏を楽しむ気持ちを持ち続けたいものです。

さて、今回は、ユニバーサルデザインについて考えてみます。

筆者がお手伝いしているグラフィック、印刷関連の世界でも、近年、ユニバーサ
ルデザインの一分野となるユニバーサルカラーデザインへの取り組みがみられま
す。グラフィックデザイン、例えば、標識や、その内容が、案内、説明などであ
る場合が特にそうですが、「見た目が悪いデザイン」であってはいけないことと
と同時に、「機能しない、使えないデザイン」であってもいけません。これは、
WEBサイトや、ディスプレイ画面などでも同様です。
色彩は、商品やサービスのイメージを大きく左右しますが、ユニバーサルカラー
デザインでは、適切なイメージを大切に伝える色彩表現を行うと同時に、高齢者、
色覚障害者など多様な人々を含む幅広い人たちにとって、機能的でわかりやす
い色の選択や配置を行います。

ユニバーサルデザインは、ノースカロライナ州立大学のロナルド・メイス氏によ
って80年代に提唱され、バリアフリーデザインをさらに幅広くした概念とされ
ています。
バリアフリーデザインが、主として障害者や高齢者などの生活を不自由にしてい
る障壁(バリア)を取り除こうとするものであるのに対し、ユニバーサルデザイン
は、はじめからできるだけバリアを作らないでおこうとするものです。年齢・能
力・体格・障害の有無などによる区別がなく、誰でもが使いやすいデザインをと
いう考え方です。

ユニバーサルデザインの原則として、次の7つが提唱されています。

 1.Equitable use
   誰でも公平に利用できること

 2.Flexibility in use
   使う上で自由度が高いこと

 3.Simple and intuitive
   使い方が簡単で、すぐに分かること

 4.Perceptible information
   必要な情報がすぐに分かること

 5.Tolerance for error
   うっかりミスが危険につながらないこと

 6.Low physical effort
   身体的な負担が少ないこと

 7.Size and space for approach and use
   接近したり利用したりしやすい大きさや空間にすること

ユニバーサルデザインでは、できるだけ多くの人を利用対象として捉え、幅広い
人たちが快適に使えるようにと考えます。障害を持つ人を特に対象とするという
のではなく、そして、製品に魅力があり、市場性が高く、あらゆる人が利用でき
るようにする、という概念です。

福祉機器や福祉用具は、障害を持つ人や高齢の人の自立支援や、介護支援を目的
としてデザインされます。これらの機器、用具の進化はますます求められます。
同時に、ユ二バーサルデザインによる幅広い人々向けの製品も、既に多く私たち
の生活に広まってきています。例えば、手触りで区別できるシャンプーとリンス
の容器は、誰しもが、手にしているでしょう。この製品は、シャンプーするとい
う場では誰しもが眼を閉じ視覚を失った利用者になる、という示唆的な例になっ
ています。

ところで、上記の7原則を読んで、これらが、製品、サービスづくり一般での指
針にもなると、受け取られるかたも多いのではないでしょうか。まさに、これら
の原則は、製品やサービスを設計するとき、レビューするとき、また、改良しよ
うとするとき、そうしたときの良いガイドとなります。

機能性を追求するときデザインは美しさを備えます。ユニバーサルデザインが示
す方向は、誰しもが気持ちよく使える機能的な美しいデザインにつながっている、
といえます。
利用者にとって良いデザイン、市場に求められるデザインを追求しようとすると
き、ユニバーサルデザインの概念は、その有効な手段であり考え方となります。
今後のいっそうの広がりに期待し、また、応援して行きたいと思います。



-追記-

ユニバーサルデザインに親しい概念として「共用品」があります。ユニバーサル
デザインとの差異についての論議はさておいて、ここでは、共用品の配慮点と概
要を、とりあげます。ユニバーサルデザインの原則とともに、主にハードウェア
のデザインの参考となるガイドとして紹介させていただきます。

 共用品の配慮点と概要

・わかりやすいパッケージにするための配慮
 識別しやすい  開封しやすい  取り出しやすい  持ち出しやすい
 再封しやすい  計量しやすい  捨てやすい  けがをしない  軽い

・操作においてわかりやすく表示するための配慮
 光を使って見てわかる  音声を使って聞いてわかる  点字、凹凸部をつける
 大きな文字にする  コントラストをはっきりさせる  絵や図をつける

・操作を使いやすくするための配慮
 片手でも使える  弱い力でも使える  聴覚にたよらない  視覚に頼らない
 細かい操作がいらない 自動化されている

・カタログや取扱い説明書をわかりやすくするための配慮
 大きな文字にする  コントラストをはっきりさせる  音声やテキストデータ
を利用する  点字やエンボスで表示する


参考
http://www.universal-design.co.jp/aboutus/idea/index.html
http://www.universal-design.gr.jp/
http://www.cudo.jp/cud_nani/index.html
http://msdn.microsoft.com/library/ja/default.asp?url=/library/ja/jpwebwk/
design/color/hess10092000.asp

http://kyoyohin.org/



■執筆者プロフィール

松井 宏次 (まつい ひろつぐ)
1級カラーコーディネーター  中小企業診断士
mailto:hiro-matsui@nifty.com