与党(自民党、公明党)は平成18年12月14日、平成19年度税制改正大綱を決定しました。企業経営者(特に中小企業)にとって関心の高い、改正項目としては、減価償却制度の大幅な見直し、資本金1億円以下の特定同族会社の留保金課税制度の見直し、特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入制度の見直しなどがあげられます。企業経営に関係する、平成19年度税制改正大綱のポイントは以下のとおりです。
1. 経済活性化・国際競争力の強化
(1) 減価償却制度
・残存価額の廃止
平成19年4月1日以後に取得される減価償却資産について、残存価額を廃止する。この場合の定率法の償却率は、定額法の償却率(1/耐用年数)を2.5倍した率とする。
現行制度では、耐用年数経過時点に残存価額として取得価額の10%が残るように償却率が設定されているが、この残存価額を廃止するということになる。
・償却可能限度額の廃止
平成19年4月1日以後に取得される減価償却資産については、耐用年数経過時点に1円(備忘価額)まで償却できることとする。定率法を採用している場合には、定率法により計算した減価償却費が一定の金額を下回るときに、償却方法を定率法から定額法に切り替えて減価償却費を計算することとする。これにより、定率法を採用している場合にも、耐用年数経過時点に1円(備忘価額)まで償却できることとする。
平成19年4月1日以前に取得をした減価償却資産については、償却可能限度額(取得価額の95%)まで償却した事業年度の翌事業年度以後5年間で均等償却ができることとする。
現行制度では取得価額の5%はその資産を売却か除却しなければ、損金算入できないが、新規取得資産については法定耐用年数内に取得価額全額(1円の備忘価額は控除)が償却できるようになる。また、既存設備についても償却可能限度額(取得価額の95%)に到達後5年間で均等償却できることとなる。
・法定耐用年数の見直し
フラットパネルデイスプレイ製造設備など3設備の法定耐用年数を短縮する。
現行10年から5年へ
・固定資産税の償却資産
固定資産税の償却資産については、資産課税としての性格を踏まえ、現行の評価方法を維持する。
※平成20年度税制改正に向け、減価償却資産の実態等につき調査・分析が行われ法定耐用年数や資産の見直しによって検討される。
2. 中小企業・ベンチャー支援
(1) エンジェル税制
・中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律に規定する特定新規中小企業者(以下「特定新規中小企業者」という。)の要件の緩和
・対象となる特定新規中小企業者の確認手続きの合理化
・特定中小会社が発行した株式に係る譲渡所得税の2分の1課税の特例の適用<期限の2年延長
(2) 特定同族会社の留保金課税制度の見直し
特定同族会社の留保金課税制度について、適用対象から資本金の額又は出資金の額が1億円以下である会社を除外する。
留保金課税とは、特定同族会社が利益を配当せずに社内に留保した場合に一定の金額について通常の法人税とは別に課税される制度をいう。
(3) 特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入制度の見直し
特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入制度について、適用除外基準である基準所得金額を1,600万円(現行800万円)に引き上げる。
この改正は、平成19年4月1日以後に開始する事業年度の法人税について適用する。
特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入制度とは、特殊支配同族会社に該<当する法人が業務主宰役員(オーナー)に対して支給する給与の額のうち、給与所得控除額に相当する部分の金額は損金の額に算入しないというもの。
■執筆者プロフィール
竹内 政明(たけうち まさあき)
竹内政明税理士事務所代表 税理士・ITコーディネータ
(TKC全国会会員・電子申告、書面添付推進事務所)
TEL:075-863-3377
FAX:076-863-3378
e-mail:masaaki@oak.ocn.ne.jp
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