減価償却制度の見直しと設備投資/小林 由香

 年の瀬となり、例年のごとく来年度の税制改正の記事が新聞を賑わしています。
平成19年度の税制改正で、減価償却制度の抜本的見直しがされる見込みです。
 日本においては、ここ十数年で、全産業の設備ビンテージ(平均年齢)が年々
上がってきています。これは、機械設備の老朽化を示し、何とかしないと国際的
競争力が失われていくと考えられています。ようやく好調になってきた設備投資
を税制面からも後押ししてさらに強化する必要があります。
 そこで、減価償却制度を見直すことで、企業の納税コストを引き下げ、キャッ
シュフローを増加させ、その設備投資を強力に後押ししようと今回の改正案が出
されております。
 現行制度の主な問題点としてまずひとつは、主要国の中で、投資額の100%
償却できないのは日本のみ。つまり現行の償却可能限度額は投資額の95%であ
り、5%の帳簿価額が残っていることにより設備廃棄の際に多くの除却損や処分
費用が発生してしまうため、設備更新の足枷となります。除却時の価値は一般的
にほとんど残っていないのが現状です。
 もうひとつは、主要国と比べて、法定耐用年数(償却期間)が長い設備が多い
具体的には、主要製造業種の約8割の設備で、日本が最も長い耐用年数となって
いるのです。
 そこで、償却可能限度額(95%)を撤廃して、償却期間経過時点において全
額損金(経費)に計上する仕組みをつくることと、法定耐用年数を諸外国に劣らな
いものに見直す(短縮する)ことにより企業の納税コストを引き下げ、資金力を
強化し、新たな設備投資の後押しをするというものです。
 かねてより、設備投資は、先に資金が出て行くが、それが税務上、会計上コス
トとして認識される時期が遅れるため、納税が先行することで企業のキャッシュ
フローを圧迫する要因となっておりました。これが今回の改正で少しでも改善し
今後の企業の好調な設備投資に拍車をかけることにつながるのであれば、今回の
改正案は評価すべきものであると言えそうです。

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 以下参考までに現行(平成18年6月21日現在)の法人税法上の減価償却について
記載します。

●減価償却とは
 減価償却資産とは、時の経過等によりその価値が減少していく資産のことで、
建物、機械装置、車両運搬具等が該当します(時の経過等によって価値が減少し
ない土地等は該当しません)。
 減価償却資産の取得に要した金額は、取得時に全額必要経費となるものではな
く、その資産の使用可能期間にわたり分割して損金(経費)としていくべきもの
です。
 この使用可能期間に該当するものとして法定耐用年数が定められています。
 減価償却とは、減価償却資産の取得に要した金額を、一定の方法によって各事
業年度の損金(経費)として配分していく手続のことをいいます。

●少額減価償却資産
 使用可能期間が1年未満または取得価額が10万円未満のものについては、そ
の取得価額の全額を事業の用に供した事業年度の損金(経費)とすることができ
ます。

●一括償却資産
 取得価額が10万円以上20万円未満のものについては、事業年度ごとに一括
して3年間で償却することができます。

●30万円未満の少額減価償却資産
 青色申告書を提出する中小企業者等が平成15年4月1日~18年3月31日
までに取得した30万円未満の減価償却資産については、取得価額の全額を損金
(経費)とすることができます (但し、10万円以上30万円未満の減価償却資
産のその年の取得価額の合計額300万円が限度)。



■執筆者プロフィール

小林由香(Kobayashi Yuka)
小林税理士事務所 所長
税理士、ITコーディネータ、ファイナンシャルプランナー
「お客様の発展のため、最大限の努力をいたします。」が信条。