1. Web2.0とは 最近、よく耳にするITに関するキーワードとしてWeb2.0がある。ただし、これはHTML4.1などのように技術仕様を表す言葉ではなく、WWW(World Wide Web)の進化を総称した言葉である。O'Reilly Media社のTim O'Reilly氏が2005年9月に発表した論文「What Is Web 2.0」により次世代インターネットを象徴する言葉として注目されることとなった。なお、この進化したWWWであるWeb2.0に対して、旧来のWWWをWeb1.0と呼んでいる。 2. Web2.0の概要 Web2.0の定義は非常にあいまいなもので、一言でこれを表すことは難しい。特徴的な内容を一部取り上げると、Web1.0はWWWサービス提供者が蓄積・公開した情報を各利用者が利用するといった一方的な情報の流れが中心であったのに対して、Web2.0ではWWWサービス提供者だけでなく、各利用者からも情報を発信して公開することが容易となる。すなわち、従来はサービス提供者が持っていた情報を発信する主導権が、各利用者に広がっていくということである。 Web1.0と2.0の違いを具体例でその一部を見てみると、個人の情報発信は個人ホームページからブログという形に進化し、インターネット百科事典がBritannica Onlineからウィキペディアという形に進化するということである。 なお、Web2.0の全容についてはO'Reilly Media社のホームページに掲載されている「What Is Web 2.0」などを参照いただきたい。 3. Web2.0における情報の信頼性 インターネット百科事典を例にして、Web2.0における情報の信頼性を考えてみる。 Web1.0とされているBritannica Onlineに掲載されている情報は、各界の著名人により執筆されているため、その内容は非常に信頼性が高いと考えられる。一方Web2.0であるウィキペディアについては、利用者が自由にその内容を記述することにより成り立っているため、内容の信頼性が低いと思われがちである。だが、その内容を多数の利用者が見て、誤りがあれば訂正を行うというプロセスを繰り返すことにより、信頼性が向上してゆき、長期的に見ると情報の信頼度は確保されていると考えられる。だが、短期的には誤った情報や、悪意を持って歪曲された情報が掲載されている可能性があるということを十分認識して、これらの情報を利用する必要がある。しかしこれについては、サーチエンジン等を利用して複数の他サイトで同じ内容の情報を参照し、それらの記述を比較することにより、情報の信頼度を推測することは可能である。 楽天証券社員によりウィキペディアの一部項目が削除されたという事件からもわかるように、自分や自分の組織が不利益となる事実内容が当事者により削除・改変されるという事件も発生している。しかし、ウィキペディアの管理人や多くの利用者がその行為を発見し、削除・改変された箇所を復元するとともに、その事実を公表した。結果として今回は楽天証券側が謝罪するという結末になったのである。ただ、一部の人の利益・不利益になるような内容については情報の中立性を保つことが非常に難しく、これをどのように扱っていくかについては、現在でも様々なところで議論が繰り返されている。 4. 自分が情報を発信する場合の留意点 Web2.0アプリケーションのひとつであるブログを利用することにより、各個人が容易に情報の発信を行うことができる。自分が発信した情報に対して、それを読んだ人がコメントを掲載できるというのもブログの特徴である。自分が書いたことに対していろいろな人から意見をもらうことにより、さらに考えが深まり、新たな知識を得るきっかけにもなる。しかし、なかには挑発的なコメントを入力する人もまれにある。それに対して売られた喧嘩は買わねばと応酬すると、お互いにヒートアップしてネット上で言葉の喧嘩をするといったようなことになり、何のためにブログを書いているかがわからなくなってしまうような状況に陥ってしまう危険性がある。 また、ブログの内容として公序良俗に反することや、特定の個人や団体を誹謗中傷するような書き込みを行うと、それに対する非難のコメントが寄せられるであろう。その非難のコメントに同調する人がさらにコメントを書き込むということが繰り返され、短時間で大量に非難のコメントが書き込まれるといった現象が時々見受けられる。これは「ブログ炎上」と呼ばれる状況であり、こうなってしまうと収集がつかなくなり、ブログの閉鎖という状況に追い込まれるということも多い。 ブログを書き込むときは、一人でパソコンに向かってキーボードを打つという作業になり、そのときには社会的なつながりを忘れがちになるが、入力された情報は非常に多くの人の目に触れる状況となることを、常に意識しておく必要がある。 5. Web2.0時代のインターネット活用 Web2.0の流れが進んでいくことにより、インターネット上では各個人から全世界に向けて情報を発信するという機会が増え、それらが世の中を動かすほどの力を持ってくると考えられる。その過程として、今までにはなかったトラブルや問題が発生し、それについて議論することにより新たな秩序やモラルが形成されつつあるのが現在である。 混乱期を避けて、安定期に入るまで静観するというのもひとつの手段ではある。だが、現在のように形が出来上がっていないときこそ、いろいろなチャンスがあるのも事実である。 皆さんもここで何か新しいことを始めてみてはいかがでしょうか !!
■執筆者プロフィール
学校法人聖パウロ学園 |
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