まちづくり三法みなおし――街は再生するか/藤井 健志

●中心市街地活性化本部が8月22日に内閣に設置され、中心市街地活性化基本
方針が9月8日づけで閣議決定されました。ロードサイドに大型店が大型店が増え、
商店街等の空洞化に対して、実効性の上げられなかったまちづくり三法の見直しが
図られています。

●そもそも1974年に旧大規模小売店舗法(大店法)が施行され、500平方メ
ートル以上の店舗については商工会等の意見を聞くこと(商調協)が義務づけられ、
都心部から大型店が実質的につくれなくなってきました。このため多くの店舗が郊
外へのその視点を向けたのでした。
 日米構造協議での米国側からの大店法撤廃要求で、1992年大店法が改正され、
商調協は廃止、トイザラスなどの外資系の企業が出店してきました。さらに車社会
の進行が大型店の郊外出店に拍車をかけました。

●1998年から2000年にかけて制定された「まちづくり三法」(中心市街地
活性化法、改正都市計画法、大店立地法)は、そもそも郊外の幹線道路沿いに大規
模な商業施設が次々と建てられ、消費者が郊外へ流出し、駅前などの古くから賑わ
っていた商店街・市場などが寂れていく状況に対して、大店法を廃止し、地域の多
様性と主体性を活かすことを目的に制定され、地域の特性を活かしたまちづくりの
可能性を拓きました。
 改正都市計画法のゾーニングにより出店の可否を決め、出店可能となれば大店立
地法で生活環境への影響を調整する、そして中心市街地活性化法は空洞化している
中心市街地を活性化させるプランを市町村が策定し、そのプランが国から認定され
た場合、支援策が講じられるというものです。

●しかしながら、規制緩和や地方分権の進展、国際協定の発効等の環境変化の中で、
多くの市町村で中心市街地活性化計画が策定され、TMOが組織されてきましたが、
中心市街地の活性化に成功した事例は少なく、郊外型大型店が増加する一方で、中
心市街地の衰退のほうが依然目につきます。シャッター通りと呼ばれるような商店
街も多く、広大な用地を求めて、病院や学校、行政庁舎までも郊外に移転するとこ
ろも見られました。

●今回の見直しの中心は、スーパーの郊外出店規制などの郊外の土地利用の規制を
強化する一方で、市街地への出店を優遇することで、大型店を中心市街地へ誘導し
ようとする考えです。
 郊外の規制強化としては、大型施設を商業・準工業地域に限定、病院や学校、福
祉施設の開発を許可制に、農地の転用の厳格化、などの策が講じるられ、また中心
市街地の規制緩和策としては、マンション建設費の一部補助、病院や福祉施設の建
設費の一部補助、中心市街地への出店手続き期間の短縮などが行われます。

●郊外の新規施設を抑制し、都市の拡大を防止し、中心市街地に住居や商業施設な
どを誘導し、利便性向上などでその活性化を図ろうとする考えです。法改正によっ
て都市機能を中心部に集める「コンパクトなまちづくり」を指向しています。

●ヨーロッパの都市はイタリアなどに代表されるように、メトロが縦横に走ってい
るローマ、ミラノ、ナポリなどの都市は別格として一般的にコンパクトなサイズで
す。フィレンツェもベニスも歩いてでもまわれます。
 我が京都のまちも自転車でどこでも行けるようなコンパクトシティ。将来的には
マイカー乗り入れが規制され、パーク・アンド・ライドのシステムが恒常化される
でしょう。
LRT(Light Rail Transit)の導入も今出川線をモデル路線として京都市におい
て検討されています。

●国からの外発的なまちづくり、制度・施策に対して、地域からの内発的なまちづ
くりがますます重要となってきています。「改正まちづくり三法」は意欲を持った
地域に重点を置き、事業支援を行うこともその一つの特徴としています。市町村行
政や住民、地域企業、諸団体等の地域構成員が、それぞれの豊かで住みよいまちを
イメージして、主体的に関わっていけば、より一層活力のある美しいまちに繋がっ
ていくことでしょう。
 主体的な個人の力の集まりが大きな輝きを与えます。


■執筆者プロフィール

藤井健志
一級建築士・中小企業診断士・ITコーディネータ
(勤務先)株式会社日商社 fujii@nisshosha.co.jp