梅雨の花といえば紫陽花(あじさい)。その花の色は土壌の酸性・アルカリ度 などで変わるといわれていますが、品種によってある程度色が固定されるよう な改良も続けられて来ているそうです。ちなみに、花のように見えているのは 正確には「がく」だとか。 四季らしい移り変わりがどこか違ってきてしまっている近年。雨が降り続く季 節も、また、それなりに楽しんでみる気持ちをもちたいものです。 さて、お読みになったかたもおられると思いますが、今年も中小企業白書が刊 行されました。 第一部では、2005年度における中小企業の動向、第二部では東アジア経済 との関係深化と中小企業の経営環境変化、そして第三部では、少子高齢化・人 口減少社会における中小企業、という構成になっています。 そして、今年の白書では「時代の節目」というとらえかたが示されています。 対外的には「東アジア経済との関係深化という、対内的には、「少子高齢化・ 人口減少社会の到来」という時代の節目に、現在の日本は立っているとされて います。 ここでは、少子高齢化に関わる節目に関する内容を取り上げてみたいと思いま す。では、まず、白書に基づいていくつか質問を。 Q1.日本の総人口の減少が始まったのは2005年からであるが、15歳から64 歳までのいわゆる生産年齢人口は、既に1996年から減少に転じている。 ・正しい ・間違い Q2.日本の経営者の平均年齢は、60歳に近い。 ・正しい ・間違い Q3.55歳以上の中小企業経営者の95%以上は、誰かに事業承継したいと考 えている。 ・正しい ・間違い Q4.事業承継について誰にも相談していない経営者は、55歳以上でも過半数 にのぼる。 ・正しい ・間違い Q5.廃業者のうちの4分の一の企業は「後継者がいない」ことが理由。 ・正しい ・間違い そうです。これらの問への正解は、いずれも「正しい」です。 (なお、白書の第三部は、公的調査の他、三菱UFJリサーチ&コンサルティ ング株式会社の調査(2005年12月)などに基づいて論じられています。Q1~ Q5は、それらの調査に照らしての問答です。) 少子高齢化においては、総人口や就労人口が減少に向かうということはもとよ り、高度成長期に大量に創業した中小企業経営者が、いま一斉に引退の時期を 迎えていてることを白書は指摘しています。 2004年の法人企業代表者の平均年齢は約58歳6ヶ月。かたや経営者が引退した い平均年齢についてもアンケート結果が紹介されていて、その年齢は64.5歳。 平均年齢との差は数年ほどしかないことになります。高度成長期に20代~30代 で創業した多くの経営者が、いっきに引退時期を迎えつつあるようです。 また、この60歳近いという企業代表者の高齢化は、中小企業の代表者の高齢化 によって平均年齢が押し上げられた要素も大きいと指摘されています。 多くの中小企業経営者が、事業承継を望みながらも、後継者不足などから、廃 業をやむなくしており、また、経営者自身が引退すべきとしている時期が近づ いているにも関わらず、効果的な事前の手立てを打てないままに現在のビジネ ス実務に携わり続けていることがうかがえます。 なお、事業承継の様々な方法のなかで、中小企業であってもM&Aという選択 も有り得る、ということも示されています。企業のコア・コンピタンスが明確 で、一定の収益・資産を確保していれば、事業売却は可能と説き、従業員11名 の企業でのM&Aによる事業承継が成功例などを取り上げています。 もうひとつ別の面から少子高齢化と中小企業の関係で、白書が示そうとしてい ることをとりあげれば、それは、中小企業の「現場における柔軟な対応」に目 をむけることで「子どもを産み育てやすい社会」を作ることができるのでは、 という提言です。 これまでの「仕事と育児の両立」への取組は、制度の整備を中心に施策を講じ てきた傾向がある。こうした施策は大企業で取り組みやすいものであったが、 実際には中小企業、こと小規模な企業の現場において、仕事と育児を両立しや すい職場環境があり、その実態の掘り下げから、いままでの諸制度発想とは異 なる新しい発想が生まれるのでは、と主張しています。これは、規模の小さな 企業の持つ本来的な「良さ」のひとつを教えてくれているともいえます。 社会が“時代の節目”にさしかかったなか、いずれの企業も、否応なしに変化 に巻き込まれます。その変化から逃げることなく、自社のチャンスを見出すき っかけ作りとして、今年の中小企業白書に目を通されてはいかがでしょうか。 ■執筆者プロフィール 松井 宏次(まつい ひろつぐ) ITコーディネータ 1級カラーコーディネーター 中小企業診断士 mailto:hiro-matsui@nifty.com |
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