「創造的破壊」とIT化推進 / 玉垣 勲

☆アイデア→商品開発→営業力

 商品開発に余念のないある事業経営者から「アイデア1、商品開発10、販売と利益計上100」という話を、先日お聞きしました。これは端的に言って営業力、販路開拓は生易しいものでないことの表現と受け止めました。

 最近、政府の音頭とりで会社員引退後の「企業OB人材活用策」云々が遡上に上っています。中小企業にとっては、人材を抱えることに限界があり、企業OBの専門能力に期待を寄せています。中小企業経営者が、この「企業OB」(専門家)へ要望していることのトップが「販路開拓」です。

 

☆供給側と需要側

 企業側での商品企画・開発には、並々ならぬものがあります。開発力如何に明日の成長の命運がかかっているとの指摘もあります。商品開発の重要性は言を待ちません。当然に開発者側の「思い入れ」があります。

 しかし、開発された商品の評価は需要サイド(消費者)が握っています。消費者サイドの「力」、「選択眼」は強くなっているのです。消費者は、”賢く”なっているのです。その点で、開発された商品の市場での認知度・評価を高めるための「営業力、販路開拓」に力が入って当然です。

 

☆成熟社会の消費者

 上記の供給者側(企業サイド)と需要者側(消費者サイド)両者の力の変化はモノ余り時代、成熟社会を象徴しています。

 その現象を加速しているのが、意図すると否に関らずIT化の進展があるのではないでしょうか。スピード・変化は、IT化の進展(携帯電話の普及など)で強まり、我々のライフスタイルさえも変化させ、消費者の趣向や多様性を助長しています。

 

☆経営とIT

 IT革命の進展は、供給者側とくにIT系企業わけてもベンダーにとっては競合激化もあり、生き残りをかけた闘いを強いられています。ITベンダーにとって、大企業は安泰という幻想はありません。新興企業の輩出も、目立っています。

 この大小入り乱れてのユーザー獲得合戦で、ユーザー側の中小企業にとってはIT化の必要性は重々わかってはいてもどうすればいいのか戸惑いを隠せません。

 その中でITコーディネータ制度は数年前に導入され、「中小企業経営とITの橋渡し役」としてのITコーディネータ及びそのグループの一つである我々NPO法人ITコーディネータ京都は精力的に活動してきました。

 

☆部分最適と全体最適

 ITハード、ソフトツールの導入、活用は生産性の向上に寄与します。ただ思いつきや無造作なIT導入は、後日に社内の動揺、フラストレーションを増幅しかねません。社内の一部門でのITツール導入が、その部門を活性化したとしても(部分最適)、各部門がバラバラにITツールを導入した場合は、会社全体にとって多少の混乱や不都合を招来することになりかねません。会社「全体の最適化」へのアドバイザーが、我々ITコーディネータの使命であります。

 

☆トップの使命 変化への挑戦

 企業のトップマネジメントにとっては、時代の潮流を読み、時代を先取りした積極的な行動が欠かせません。経営者は、「変化への果敢な挑戦を」必要とするのです。経済学者シュンペータの「創造的破壊」の言を噛み締め、大胆な発想と稀有の行動力で時代の先駆者にならんとの気概を持っていただきたいですね。「スモール イズ ビューテイフル」(名著あり)、「小よく大を制す」(格言)を自らの企業のIT化推進で実践いただくことを、我々ITコーディネータ及びNPO法人ITコーディネータ京都は願っています。

 


■執筆者プロフィール

 玉垣 勲(たまがき いさお)

 ITコーディネータ、中小企業診断士、社会保険労務士、ファイナンシャル・プランナー(FP)、通訳ガイド

 (社)中小企業診断協会京都支部長

 (NPO)ITコーディネータ京都会長

【一言】

 サラリーマン35年(信用金庫)後、自営へ転進、人生後半・人生本番。

 会社員時代の職務経験・人脈、過去に取得の資格を生かして、地域社会、地元企業、ご家庭のIT化に尽力します。