CIO的な存在の人材が重要/成岡 秀夫

 ●最近、いろいろな企業にお伺いすることが多く、経営者の方とざっくばらん
な経営のお話しをさせていただくことが多くあります。現在、景気が上向きと
は言え、都市部集中の傾向が強く、首都圏、中京圏は元気なものの、特に関西
圏では、目だって元気と言えるかどうか、疑問です。

●そんな中でも、自動車産業向きに素材を提供しているメーカーや、サービス
業でも人材派遣関係の業種などは、顧客先の業況が好調なことに引きずられ、
非常に活況を呈している企業があります。

●それはそれでご同慶の至りなのですが、そういう状態にある企業ほど、目先
の受注や年度予算の達成に追われて、なかなか内部のマネジメントに手が回っ
ていないのが現状です。好調なときほど忙しく、それが、かえって日常の問題
点を隠すので、余計に分からなくなります。

●我々がたまにお伺いして状態を聞くと、売上は伸びており、受注残高も多
く、現場は多忙を極めています。少々のトラブルは腕力で解決し、時間との戦
いが展開されています。歩留まりの向上より、目先に出荷に追われています。
それはそれで、忙しいのはいいのですが、「忙しい」という字は「心を亡ぼ
す」と書きます。

●こういう時ほど、現場での日常の問題点に目配りし、どういう業務のフロー
に課題があり、何が原因で、対策はどうすればいいのかを、システム的に考え
る思考が大切です。とかく、目先の課題に追われがちな時ほど、こういう観点
が重要です。

●これは、現場を冷静に眺め、少し立場を変えて、全体を俯瞰するポジション
からものを見ないといけません。どうしても現場の管理者は、仕方なく「部分
最適」に陥りがちです。それは避けないといけないとわかっていても、今日
の、明日の課題が目前にあると、そちらに、つい、目が行きます。

●規模の小さい企業では、情報部門を統括するボードメンバー、すなわち
「CIO(Chief Information Officer=情報部門統括役員)」のような立場の
方はいらっしゃらる企業は少くないと思います。しかしながら、企業の中では
誰かがこういう役割を担わないといけないのです。

●大多数の規模の小さい企業では、日常のシステムのメンテナンスやオペレー
ションは、はっきりしたシステム担当の部署があるのではなく、なんとなく?
こういう分野に強い、あるいは得意な担当者がいて、その方にかなりな部分を
任せています。

●問題は、その上の立場で、自社の経営的な課題を理解した立場でのシステム
関係を統括する立場の役割を担った方がいらっしゃらないというのが、ほんと
どの企業の実態ではないでしょうか。本来、そういう立場の方が「全体最適」
を判断され、経営の方向に添って経営トップに方向性を具申されるのが、ある
べき姿だと思います。

●そんな余裕はないと言われるのも多いかと思いますが、とにかく兼任でも構
わないので、誰かにそのミッションを明確にすることが大事かと思います。社
内に、誰それがこういうミッションを背負っているということを、明確にア
ピールすることも、経営の意思を表す重要な要素です。

●これから伸びようとする企業にとって、ITの活用は必須です。そのために
は、ぜひ、今から、将来のCIOとなるべき人材の目星をつけ、経営の課題を共
に考えると言う立場で判断の出来る人材の養成をすることが求められます。

●昨年11月に逝去したピーター・ドラッカーは、「企業は、また、いかなる組
織体においても本当の資源はひとつしかない。それは、人間である。」と言い
切っています。まさに、至言だと思います。システムに投資するのと同じくら
い重要なのは、人材に対する投資です。


■執筆者プロフィール

株式会社成岡マネジメントオフィス 代表取締役 成岡 秀夫
(中小企業診断士/ITコーディネータ/高度情報処理技術者)
長年の企業経営者としての立場から中小中堅企業の経営のパートナーとして活
動(生まれる前からの阪神ファン)
naruoka@nmo.ne.jp  http://www.nmo.ne.jp