監督が変われば・・・ / 竹内 肇


 日本最南端、沖縄・石垣島の「八重山商工」が、離島高校初の春の選抜出場を
手中にしたそうだ。同校の監督は、少年野球の指導者として世界大会出場経験が
あり、昨年、同校野球部監督に就任して2年目の快挙だということである。
 監督が変わることで、これほどに変わるもんなんだ、と感心した。

 そう言えば、プロ野球で日本一となった「千葉ロッテマリーンズ」の監督であ
るパレンタイン監督も昨年就任して2年目の出来事である。また、セリーグを制
した阪神タイガースの岡田監督も今年2年目。その前の星野監督も就任2年目に
してセリーグ優勝に導いている。
 そうそう、先月末、柱谷監督率いるサッカーチーム「京都パープルサンガ」が
J1昇格(復帰)を決めて、歓喜されている方々も多いと思うが、この柱谷監督
も、昨年途中にパープルサンガ監督に就任して1年半とのこと。
 昨年、セリーグ優勝した中日ドランゴンスの落合監督は初年度で優勝に導いて
いる。
 「優秀な監督」として片付けられるかもしれないが、幾つかのプロ野球チーム
の監督就任と成績を調べてみると、多くの監督が、就任の後2年程度の比較的早
い段階で最も良好な成績を残していることが分かる。(その後、優秀な監督であ
ってもある程度の成績を維持した後に成績が降下して監督を退いている。もちろ
ん全てということではないが。)
 やはり、監督が変わることでチームも変わる?

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 話は変わるが、2005年度中小企業白書の第2部「経済構造変化と中小企業
の経営革新等」によると、中小企業においては、『経営革新への取り組みを活発
化し、企業成長を実現することが重要な課題となる。』として、「経営革新の新
規性が高いほど成長率も高い」とのデータを示している。
 合わせて、経営革新への取り組みを成功させるには、『経営者自身が自社を取
り巻く事業環境の分析等を経て「戦略」を決定することが必要』であり、『経営
革新は従来行っていなかった新たな活動を行う行為であることから、普段の経営
よりも経営者のリーダーシップの必要性が増し、自ら率先することにより経営革
新を実現しているのである。』としている。

 「経営者のリーダーシップにより、生まれ変わった企業」として、醤油メーカ
ーが醤油事業から撤退し、醤油醸造場時代に培った微生物の発酵技術を利用して
環境浄化事業に取り組んでいる事例が紹介されている。
 社長の苦渋の選択と、強い意志を持ってリーダーシップを発揮したことが成功
要因だと述べている。

 私も、ある会社で、下請中心からの脱皮という変革を目指した自社製品開発の
企画を側面からお手伝いした経験がある。社長からの全権を委譲された副社長を
中心にプロジェクトが組まれ、既存事業の忙しい時間を割いて妥協を許さない熱
心な議論が繰り返された。現在、同製品は会社の主要な事業に成長している。
 会社としての強い決断と副社長のリーダーシップがあったからこそ成し遂げら
れたものと思う。3年前の話であるから、2〜3年で「経営革新」を成就された
ことになる。
 当時の副社長は、現在、社長に就任され、更なる事業の拡大に尽力されている。

 企業には、創業期→成長期→安定期(成熟期)→衰退期と言ったライフサイク
ルがある。伸びる企業は、成長期と安定期のサイクルを繰り返しており、安定期
から成長期への引き金は「経営革新」であり、これを成功に導くのは経営者のリ
ーダーシップなのである。

 このことは「監督が変わればチームも変わる」に通ずるものがないだろうか?

 監督が変わると練習方法から試合の戦術までがガラリと変わってしまうことが
多い。チームにとっては「革新」である。また、監督には大きな権限が与えられ
ており、また、経験や実績に裏付けられた自信もあってリーダーシップを発揮し
やすい環境にある。
 「革新」と「リーダーシップ」が共鳴したときにこそ「革新」は成功する。
 勢いみなぎる「成長期」を迎えることができるだ。しかし、やがては安定期か
ら衰退期を迎える。プロ野球においては、こうしたライフサイクルが監督の交代
劇によって繰り返される。

 中小企業では、リーダーである社長を簡単に挿げ替えることはできない。なら
ば、社長自身が「想い」と「行動」の部分で変わらなければならない。その上で
リーダーシップを発揮して「経営革新」を率先しなければならない。
 社長自身が変革しなければならないのである。
 「社長が変われば会社が変わる」のだ。その成果は2年程度で見えてくるはず
だ。

 経済環境の変化がめまぐるしい今日、企業のライフサイクルは短くなっている。
 あなたの会社は今「経営革新」を必要としていないだろうか?

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■執筆者プロフィール

竹内 肇(タケウチ ハジメ)
E-mail:takeuchi@pangkal.com 

◆中小零細企業の情報化促進・経営革新支援とプライバシーマーク取得支援◆
 合資会社パンカル 代表 
 URL http://www.pangkal.com/