ここ数年、毎年同じ時期に同じリゾート地で休暇を過ごしている。 ただ、宿泊するリゾートホテルは、そのときどきで異なるところばかりである。 なぜなら、もっとも希望しているところは、常に予約でいっぱいだからである。 そのお陰で、幸か不幸か色々なホテルで過ごすことができ、滞在するホテルよっ て休暇の質はかなり大きな差がでるものだということを、実感として得るように なった。 そんなことを、常々思っていたところ・・・。 リッツ・カールトンの創立者であるシュルツィ氏の言葉に出会った。 「ドント・シンク、フィール(考える前に、お客様の温度を感じなさい)」 シュルツィ氏はいつも「温度に気を配れ」と言うそうだ。もちろん温度は、気 温のことではない。そのホテルの従業員が醸し出す温かみ、お客様が心からリラ ックスできる雰囲気、人と人が触れ合うことによって生まれる活気。それらをひ っくるめて温度と呼ぶそうだ。(高野登『サービスを超える瞬間』より) 飲食店に入って料理を注文する前なのに、なんとなく味が想像できたり、初め て会う人物でまだ挨拶を交わしただけなのに、信頼できる人物かどうかが直感的 にわかってしまったりすることがある。このように私たちは知らず知らずの間に 人や店が発するメッセージを温度として感じ取っていると思う。 温度を感じ取るのは、サービスを受ける側だけではない。むしろ五感をフルに 使って温度を感じ取らなくてはいけないのは、サービスを提供する側であろう。 ホテルの場合、疲れた表情をして戻ってきたお客様がいたとする。スポーツのあ との心地よい疲れかもしれないし、何かトラブルに巻き込まれて身も心も疲れ果 てているのかも知れない。 接客する従業員は、直接コミュニケーションをとればよい場合もあるが、必ず しもその疲れの原因を教えてくれるとは限らない。結局は頭で考えるだけでなく お客様の表情立ち振る舞いなどから温度を感じ取って判断するしかない。つまり 「ドント・シンク、フィール」なのだ。 そこで、必要となるのが「感性を高めること」である。 私は、ホテルの従業員ではないが、同じサービス業に携わるものとして非常に大 切なことと考えている。これは、試験に合格して資格を取得したり、ある種の技 術を身につけたりする以上に時間もヒマもかかるものだと思う。今の年齢からだ と一生かかっても無理な場合もあるかもしれない。 ある小学校の校長は「センス・オブ・ワンダー」という言葉を繰り返し使われ る。「センス・オブ・ワンダー」=「神秘さや不思議さに目を見張る感性」を子 供のうちに身につけておくと、後で大きな花が咲くに違いないのだといわれる。 この感性は、やがて大人になるとやってくる倦怠と幻滅、自然という源泉から 遠ざかること、人工的なものに夢中になることなどに対する解毒剤となる(レイ チェル・カールソン著『センス・オブ・ワンダー』)のだという。 私自身、日常に忙殺され、ややもすると仕事を機械的に処理してしまうケース があるのではないかと思う。そういうときが要注意なのである。書類には表れて こない、「お客様の温度」を感じることを忘れているからである。 税理士である前に、サービスに携わる一人の人間としてお客様に接することを 常に心がけて仕事をしたいと思っている。 以下リッツ・カールトンのクレド(信条)より抜粋。 「リッツ・カールトンでお客様が経験されるもの、それは感覚を満たす心地よさ 満ち足りた幸福感、そしてお客様が言葉にされない願望やニーズを先読みしてお 答えするサービスの心です。」 これは、ホテルのみならず多くの業種に通用するのではないだろうか? ■執筆者プロフィール 小林由香(Kobayashi Yuka) 小林税理士事務所 所長 税理士、ITコーディネータ、ファイナンシャルプランナー 「お客様の発展のため、最大限の努力をいたします。」が信条。 |
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