●去る6月4日、私達ITコーディネータ京都は、NPO法人化2年目の総会を
向かえました。記念講演にITコーディネータ協会の下田専務理事をお迎えし
て、ITCの現状、今年度の活動方向性など、貴重なお話をお聞きすることが
できました。
ITCの資格認定者は、3月31日現在約5800名に達しているとのことで
とても喜ばしいことです。しかし、企業内ITC(大手・中小ベンダー系勤務)
が約75%に達していて、独立系ITC(中小起業診断士、税理士、会計士)
は約25%、その比率は3:1であることです。中小企業診断士の中には情報
系を主としておられる方も多いと思われることから、いわゆる経営系と称され
るITCの割合が少ないことが残念に思われます。
ITCの教材はとてもよくまとめられていて、私の本業についても参考として
使わせていただいた部分がたくさんありました。特にマーケティングに関する
分野については、それまでも別のところで勉強をしていましたので、最近の理
論を改めて見直しすることができました。
経営系の方にも、経営計画、経営戦略、マネジメントの支援・アドバイスをさ
れる場合に、もっともっとITCプロセスを活用いただきたいと思います。
●一方、ITCプロセスに採り上げられている企業の規模は、私達経営系が、日
常接している会社の規模とは違い過ぎ、プロセスをそのまま使えないと言う声
を聞きます。
そこで今回は中小企業にも使える、あの「金のなる木…」のPPM(プロダク
ト・ポートフォリオ・マネジメント)の活用方法についてお話します。
PPMの詳しいご説明は、ITC教材やマーケティング関係の本に譲るとして
簡単には、シェアと成長率を軸とした座標図に基づき商品戦略を立てるという
ものです。
そこでは、商品群を次の4区分に分け、商品戦略を考えます。
・負け犬
・問題児
・スター
・金のなる木
●中小企業の場合、それぞれのシェアは数値にできるようなものでなく、コンマ
○○パーセントは当たり前で、とても戦略を立てる為に役に立つものではあり
ません。
そこでPPMを中小企業にも使える形に変えたのが、ICS(イン・クライア
ント・シェア)という考え方です。
次の図をご覧ください。
↑ |
ク 戦略顧客 |優良顧客
成 ラ |
長 イ 1 | 2
率 ア ―――――――――――
ン 4 | 3
ト |
将来顧客 |売上顧客
↓ |
低 ― ICS ― 高
●ICSとは、顧客内シェアのことを言います、ICSが高いということは、顧
客が発注する量のうち、自社が獲得する割合が高いということです。逆にIC
Sが低いということは、その顧客は他社の上得意になっているといえます。
1.戦略顧客…競合他社の顧客、しかも成長率が高い
2.優良顧客…ICSが高く高成長の理想的な会社
3.売上顧客…ICSが高く低成長。
自社の売上がほとんどこの顧客になっているというケースも
4.将来顧客…ICS、成長率ともに低く将来性を期待するのみの顧客
重点的に攻略の必要なのは、戦略顧客です。しかし、実際の営業に時間をかけ
ているのは、3→2→1になっている場合が多く、売上顧客にばかり目が行っ
てしまっているのが現実です。この売上顧客を詳細に分析すると低利益、時に
は赤字になっていることもよくあります。これを、1→2→3→4に変えてし
まうのが、低成長下で売上を伸ばすポイントになります。
●戦略顧客は、競合他社の顧客そのものです、この会社の成長率が高い場合、競
合他社の成長を促すことになり絶対に放置出来ないのです。
成長の内容をよく見てみると、既存の分野が成長している部分と新しい分野が
成長している部分に分かれていることに注意してください。既存の分野の成長
は、そのまま競合他社に流れる場合もありますが、競合他社の受入体制が整わ
ない場合には自社に流れてくる可能性も捨て切れません。
また、新しい分野の成長は最も力を入れていかなければならない部分です。今
まで取り扱っていない分野だけに、競合他社も受入体制が出来ていないことが
多いのです。
このスキを逃さずICSをあげることが出来れば、顧客が発注を増やした金額
の大部分を自社が獲得できる可能性も無くはありません。
■執筆者プロフィール
下山 弘一(しもやま ひろかず)
税理士、ITコーディネータ、システムアドミニストレータ
京都市中京区西ノ京南上合町35シンフォニー太子道8F
URL:http://www.e-komon.jp
E-mail:support@e-komon.jp
◆経営戦略から情報化の相談まで中小企業のいい顧問でありたい◆
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