商品のライフサイクルとチャンス/松井 宏次


5月 春から夏へ移る季節です。
紅葉で知られる高雄や嵯峨野をはじめとする京都の郊外も、美しい新緑におおわ
れています。明るい緑から、深い緑まで、山々は色とりどりの「緑」です。


今回は、4月に発表された2005年度の中小企業白書から、商品ライフサイク
ルに関わる事項を拾ってみました。

次の数字は、かつてはヒットしていたが現在は売れ無くなった商品についての統
計値です。
 1980年代 46.5%に対し、11.5%
 1990年代 26.8%に対し、21.2%
 2000年代  5.6%に対し、51.8%
前者の%値が5年超のライフサイクルだったとする商品の、後者の%値が2年未
満のライフサイクルだったとする商品のそれぞれの割合です。80年代には、5
年以上のライフサイクルをもっていた商品が45%を超えていたのに対し、20
00年代では6%にも満たない割合となっています。いっぽう、2年未満のライ
フサイクルだったとされる商品が5割を超えています。
商品のライフサイクルの短期化が言われるなか、具体的な値のひとつです。

また他に、同白書では、商品(製品・サービス)の変遷についても例示されてい
ます。
 
  音源メディア:レコード(1940年)→カセットテープ(1960年)
         →CD,MD(1980,1990)→ネット配信(2000)
          音源のメディアがアナログからデジタルに変化
          
  水:井戸水 →水道水(1880年) → ミネラルウォーター(1980年)
          「水」に対する価値観が変化
   
  結婚式場:自宅 →神社・寺院・教会→ ホテル→ レストラン

                 ( )内は、普及が進んだ年です。

今でこそ自明であるかのような製品・サービスの変遷が、変わり目を迎える時点
で、当事者達により、はたして予測され、または了解されていただろうか、とい
う指摘をする例示です。

価値観が多様で、また、技術進歩が極めて速い近年では、既存の商品のライフサ
イクルを終えさせるモノやコトが、同業、関連業種の枠の外から登場することが
少なくありません。
自社の商品の導入/成長/成熟/衰退というライフサイクルを油断無く捉えるとと
ともに、多くの隣接分野、異分野に対し、新規参入のチャンスを、誰しもが持ち
得ることの気づきも大切にしたいものです。


‐参照‐

中小企業白書はwebサイトでその内容を見ることができます。
 中小企業を取り巻く環境と中小企業の動態の調査、分析に続き「経済構造変化
と中小企業の経営革新」として
 1.経済構造の変化と中小企業の経営革新
 2.経営革新と経営者の役割
 3.高い創造性を生み出す新製品開発と事業連携
 4.マーケットを見据えた販路開拓
 5.時代の変化に対応する新分野進出
と、各種の環境変化に対応して発展を続ける上で最も重要な経営革新のあり方に
ついて分析されています。
昨年2004年5月に経済産業省によって策定された「新産業創造戦略」の実現には
個別中小企業レベルでの経営革新や創業といったリスクに積極的に挑戦する活動
を促進し、総体としての我が国経済の再活性化につなげていくことが必要、とし
て、論考が進められています。

この2005年度白書の基本トーンのひとつは、我が国経済社会の今後の活力を
維持していく上で大きな役割をもち、また、多様な就業の機会を生み出す中小企
業の可能性を、国民に良く伝えて行こうとする志向です。「中小企業というビジ
ネスのありかた」のブランド力を高めようとしています。
今年もぜひ一読をおすすめします。

中小企業白書 URL
http://www.chusho.meti.go.jp/hakusyo/index.html

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■執筆者プロフィール

松井 宏次(まつい ひろつぐ)
ITコーディネータ 1級カラーコーディネーター 中小企業診断士
mailto:hiro-matsui@nifty.com