e-文書法と文書情報管理平成17年度税制改正のポイント/安井 伸夫

今日は平成17年度の税制改正のうち、法人に関係する主な改正点をピックア
ップしたいと思います。今までにない新制度もありますので、経営者の方は必読
ですよ。

1.人材投資促進税制

 人材育成に積極的に取り組む企業において、教育訓練費の一定割合を法人税額
から控除する制度です。3年間の時限措置となっています。内容は「基本制度」
と「中小企業の特例制度」のふたつがあり、基本制度は「増加額」、特例制度は
「総額」に対して適用されます。

(1)税額控除額

   基本制度 税額控除額=C×25%(法人税額×10%が限度)

   特例制度 a)C/A≧40%の場合
          税額控除額=B×20%
         
        b)C/A<40%の場合
          税額控除額=B×(C/A×50%)

        いずれも法人税額×10%が限度

        A=前2期の教育訓練費平均額
        B=当期教育訓練費
        C=B-A

(2)税額控除額計算の具体例

   基準額(前2期の教育訓練費の平均額)500万円の中小企業が、適用事
  業年度の教育訓練費が40%増加し、700万円支出した場合

  (1)基本制度 税額控除額  50万円(200万円×25%)
  (2)特例制度 税額控除額 140万円(700万円×20%)
  (3)(1)<(2) よって、法人税額控除額140万円
             ただし、法人税額×10%が限度となる。

(3)対象となる教育訓練費

 ・講師・指導員等経費:社外講師、指導員に支払う講師料等
 ・教材費      :研修用教材・プログラムの購入料等
 ・外部施設使用料  :研修で使用する外部施設・設備の借上料、利用料
 ・研修参加費    :企業が従業員の教育訓練上で必要なものとして指定し
            た講座等の受講費用、参加費用
 ・研修委託費    :講師、教材等を含め研修全体を外部の教育機関へ委託
            する場合の費用
 なお、この制度はあくまでも従業員の教育訓練が対象で、役員等への教育等は
適用除外となっています。

2.経営革新・創業支援への税制措置強化

 中小企業支援三法(中小創造法、経営革新法、新事業創出促進法)を統合・強
化する「中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律」が成立する見通し(本
稿を執筆中は審議中)となっています。これにより、各種税制措置も統合・強化
されることになります。

(1)経営革新支援

 a) 投資設備減税の拡充
   経営革新計画承認企業のすべてに対し、計画に従って行った設備投資に対
  し、30%の特別償却または7%の税額控除(リースを含む)を行う。
 b) 留保金課税の特例
   すべての承認企業が、経営革新のための事業を実施している各事業年度に
  ついて、留保金課税が不適用となる。

(2)異分野連携支援

   異分野連携新事業分野開拓計画の認定を受けた者のうち一定の成長が見込
  まれる認定事業者が行った設備投資に対し、30%の特別償却または7%の
  税額控除(リースを含む)を行う。

 なお、税額控除については、いずれも法人税額の20%が限度となります。

3.その他
 
 その他、法人特に中小企業経営に関係する改正としては、
 ・企業再生円滑化を図るための税制措置
 ・中小企業等基盤強化税制(流通・サービス業)の延長
 ・中小小売商業振興法に基づいて整備される商業施設等の特別償却の延長
 ・事業協同組合の留保所得の特別控除制度の延長
 ・中小企業の貸倒引当金の特例措置の延長
 ・商工中金・信用保証協会の抵当権設定登記等の税率軽減の延長

 などがあります。実際の適用に当たっては、会社の顧問税理士等にお問合せ下
さい。



■執筆者プロフィール

安井 伸夫(やすい のぶお)
 有限会社経営サポート 代表取締役
 安井税理士事務所 所長
 税理士・社会保険労務士・1級FP技能士・ITC
 URL http://www.keiei-s.com