グループウエアの活用を~情報共有機能を活かす方法~/成岡 秀夫

●最近、某社の経営指導にそこそこの時間を充てることになり、週のうち半分
くらい先方にお邪魔しています。その会社の社内ネットワークに入れてもらっ
て、グループウエアの一員となり、日常のコミュニケーションに入り込んで、
初めてその活用の実態が判明しました。

●実際の中小企業の現場では、以下のような問題点が克服できないまま、利用
活用がなかなか進んでいません。ITがツールとしての充分な機能を発揮しない
まま、その特徴が活かしきれていないようです。

●このグループウエアは、お馴染みの「S社」のお手軽な中小企業向けのグルー
プウエアです。50人くらいまでの企業には、もってこいの価格と手軽さと簡便
さで、相当な数のクライアントが利用していると聞いています。

●「回覧板」や「掲示板」その他「共有文書」などの機能がふんだんにあり、
利用者の利便性をとことん追求しています。なによりも、WEB上で使えるから、
他の場所からもネットワークに入れるし、環境さえ整えば、どこからでも使う
ことができます。

●ところが、情報共有が何かぎくしゃくしているようです。ある人は重要な連
絡事項はメールで流すし、社長は簡単な指示なら回覧板のコメントに書き込む
し、日報は無作為に回覧板の添付ファイルにアップされるし、ある人は掲示板
にお知らせを書き込むし・・・・。
全然と言っていいほど、その「運用のルール」が徹底されていないのです。

●当初は、徹底していないのなら、きちんと実行さすための仕組みづくりをす
ればいいと考えたのですが、私自身もこのグループウエアに入って感じたこと
は、徹底する以前の問題です。誰が、そのルールを、いつまでに決めて、誰が
責任もって運用するのかという基本的なことが決められていないのです。

●ハードの箱を用意し、グループウエアというソフトを注入し、ネットワーク
のインフラも整備したまでは良かったのです。いざ、運用の段階となって、
自分たちで構築をしていく段階になると、ほとんど運用のルール化がなされな
いまま、途端にポテンシャルが落ちてしまったのです。

●結局、システム担当者がやるのか、広報的な情報共有もあるので、総務部門
がやるのか、その区別すらついていません。「To-Do」リストもあるのですが、
全然活用されていませんでした。問題点はおおよそ誰もが認識できているので
すが、手がついていないのです。

●当初から完璧なものを求めても、そうは行きませんから、徐々に作り上げて
いくイメージでいいのです。ただ、そのスケジュールも、なんとなくぼんやり
とあるようなイメージで、誰もが明確に意識を持っているわけではありません
でした。

●そこそこの投資をし、幾分か中途半端に活用され、情報共有のルール化が出
来ていない現状においては、かえって指示命令が錯綜混乱し、誤解や思い違い、
行き違いが頻繁に発生していました。

●そこで、まず課題の抽出に着手し、対応策の検討を行い、やっと運用のルー
ルらしきものが出来ました。確かに、現場レベルは、時事刻々変化しますから、
現在決めたことが、ずっと永遠に通用するとは思っていませんが、だからとい
って、運用を成り行きで任せてはいけません。

●ITCプロセスの中に「企業の成熟度」というキーワードがありますが、まさ
に成熟度の低い企業の現場でのITツールの活用の問題点が浮き彫りになった事
例です。怖いのは、そのことに気がついていないということなのです。我々
が、すこし離れた位置から俯瞰して、かつ、本当に現場の中に入って、初めて
分かる運用の問題点です。

●大なり小なり、これに類似した事例は、それこそ、山のごとくあると思いま
す。ITの活用も、所詮道具をどう有効に、かつ、効果的に使い、結果を出すか
ということなので、運用面のサポートが重要です。そして、現場もその課題
認識をもっと我がことになるように持つことがポイントだと感じています。


■執筆者プロフィール

成岡 秀夫
中小企業診断士・ITコーディネータ・システムアナリスト
上級システムアドミニストレータ
10月1日に株式会社成岡マネジメントオフィスを設立。代表取締役。 
URL:http://www.nmo.ne.jp 

過去数社の役員を経験したマネジメントをベースに、特に中小企業の経営改善に
積極的に取り組む。毎週月曜日発行のマネジメントレター「経営の現場から」は
多くの読者から好評を得る。
email:naruoka@nmo.ne.jp