会社法改正/安井 伸夫

会社のフレームワークが大きく変わろうとしています。法制審議会では、商法
のうち会社に関する部分を「会社法」として独立法制化する作業を進めており、
来年春の通常国会での法案提出に向けて作業が進んでいます。そこで、今回は、
「会社法(仮称)」を取り上げようと思います。

1 会社の形態
  株式会社と有限会社を、公開会社と非公開会社(譲渡制限会社)に区分し、
 有限会社を廃止する。ただし、現行の有限会社は、所要の経過措置により、有
 限会社の商号を引き続き使用できる。
 会社の類型は、株式会社、合資会社、合名会社、合同会社(日本版LLC)の
 4類型になる。

2 会社の設立
 株式会社1000万円・有限会社300万円の最低資本金制度を撤廃する。

3 会社の機関
 (1)譲渡制限会社は取締役会の設置が任意
    譲渡制限会社は所有と経営が分離していないため、取締役会の設置は任
   意となり、監査役を設置しないことも認められる。設置した場合は、監査
   役、会計参与、又は3委員会等(指名委員会、監査委員会、報酬委員会、
   執行役)のいずれかを設置しなければならない。
 (2)取締役会を設置しない株式会社の場合
    取締役会を設置しない株式会社は有限会社型の機関設計が適用される。
    ・監査役の設置が任意。
    ・取締役の員数は1名で足りる。
    ・取締役又は監査役の任期を最大10年まで伸長することができる。
 (3)会計参与
    会計参与(仮称)という会社の機関が新設される。会計参与の資格は、
   税理士(税理士法人を含む)又は公認会計士(監査法人を含む)とされて
   いる。

4 合同会社(日本版LLC)の創設
  従来の株式会社、有限会社、合名・合資会社と異なる新しい会社類型として
 合同会社(仮称)が取り上げられる。合同会社の社員は、合名・合資会社のよ
 うに無限連帯責任を負わないとされ、株式会社と同様有限責任が確保される。

5 その他
  現物出資・事後設立関係、株式関係、特に自己株式の取得関係、計算関係な
 ど改正項目は多岐にわたります。

6 私見
・約10年程前に最低資本金制度が導入されました。当時の法務省は株式会社な
 ら最低でも資本金は3~5千万円であるべきと主張していましたが、いろいろ
 な圧力団体の抵抗で、結局は株式1千万円・有限3百万円という金額に妥協し
 たといいます。改正後もいずれは最低資本金を増額するとの方向で動いていた
 ようですが、時代は変わりましたね。…ほんと10年一昔です。
・多くの中小企業は、株式譲渡制限会社となり、取締役・監査役の任期を定款で
 10年に伸長することが予想されます。そうすれば、役員変更登記を10年に
 1度行えば良いということになり、必然的に司法書士の減収が予想されます。
 私の友人の司法書士によれば、司法書士1人当り、年間100万円の減収にな
 るそうです。商業登記を主な業務にしている司法書士ならそれ以上ということ
 になり、ちょっと大変そうです。
・いずれにせよ、今回の改正は大改正であることは間違いなく、それに合わせて
 税法等の法律も改正されます。実務家にとっては大きなビジネスチャンスが到
 来しそうです。


■執筆者プロフィール

安井伸夫
有限会社経営サポート 代表取締役
税理士・社会保険労務士・1級FP技能士
URL http://www.keiei-s.com