ITSSP事業 経営者研修会の報告/洲崎 章弘

 京都地区で行われたITSSP(ITソリューションスクエアプロジェクト)
事業の経営者研修会が終了しました。政府出資特別法人(株)京都ソフトアプリ
ケーションが主催し、ITコーディネータ京都が運営協力いたしました。ITS
SP事業とは、経済産業省と独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が行って
いる情報化投資活性化支援事業です。
 ITSSPのホームページ(http://www.itssp.jp/)によると、『中小企業の経
営者の方々に、自社の経営戦略を実現させるために、最も効果的に情報技術 
(IT)を活用していただけるように、経営とIT双方に通じ経営者の立場でソ
リューションを提供する専門家である「ITコーディネータ」等による指導と支
援をいたします。』とあります。

 今回の経営者研修会は、9月4日~10月2日の間の土曜日4日間で行い、1
2企業の参加がありました。中小企業の経営者、幹部の方に参加していただき、
ITコーディネータが基本として用いるITCプロセスに準じて、自社の経営お
よびIT化について学んでいただきました。中小企業の経営者は、自社の現在の
状態、これからやるべきことを頭の中に持ってらっしゃいます。しかし、それが
漠然としたイメージであることが多く、この研修では、それをきっちりと社員に
説明できる形にまとめることを行いました。また、IT化については、担当のI
Tコーディネータがアドバイスすることによって、経営者のやりたいことを実現
するITツールにどの様なものがあるか知ってもらいました。

 具体的には、下記のようなプログラムで行いました。
  1.自社の目標の明確化
  2.SWOT分析
  3.主要成功要因(CSF)の設定  CSF:critical success factors
  4.アクションプランの設定
  5.モニタリングの設定
  6.ビジネスモデル図の作成
  7.導入ITの検討
  8.投資効果の検討
  9.成果発表

1.自社の目標の明確化
 まず、自社がこれから目指す、目標を具体的にします。社長の思いや会社の理
念などを考慮して、これから会社はどこへ向かうのか、社員に分かりやすい形で
示します。今回は、3年後の会社の目標を立ててもらいました。

2.SWOT分析
 戦略を考える準備として、自社の強み・弱みを分析していただきました。さら
に、自社の事業を考えて、外部環境の機会(良い影響を与えそうなこと)、脅威
(悪い影響を与えそうなこと)について分析します。

3.主要成功要因(CSF)の設定
 SWOT分析を基に自社の目標を達成するためには何が必要かを検討してもらい
ました。まず、SWOT分析で行った「自社の強み・弱み」を縦軸に、「外部環
境の機会・脅威」を横軸に表を作成し、それぞれの交差した部分について、する
べきことを成功要因として検討します。そして、成功要因の中から、自社の目標
を達成するために、必要なことを主要成功要因として、3つ程度選択します。

  ┌─┬──────────┬──────────┐
  │  │        機会        │        脅威        │
  ├─┼──────────┼──────────┤
  │  │自社の強みを機会に活│自社の強みで脅威に対│
  │強│かすためにするべきこ│応するためにするべき│
  │み│と                  │こと                │
  │  │                    │                    │
  ├─┼──────────┼──────────┤
  │  │自社の弱みで機会を取│自社の弱みで脅威に対│
  │弱│りこぼさないようにす│して最悪の事態になら│
  │み│るべきこと          │ないようにするべきこ│
  │  │                    │と                  │
  └─┴──────────┴──────────┘

4.アクションプランの設定
 主要成功要因を達成するための計画を立てます。今回は、3年後を目標に対し
て、「今すぐすること」、「1年目にすること」、「3年目にすること」の3つ
の期間に分けて検討しました。

5.モニタリングの設定
 アクションプランが計画通り進んでいるかをモニタリング(継続監視)し、
チェックする項目を設定します。

6.ビジネスモデル図(戦略マップ)の作成
 自社の目標を達成するために、これまで検討してきたやるべきことを図で表現
します。このとき、主要成功要因やすでに持っている自社の強み(コアコンピタ
ンス)がどの様に関係しているかが分かるようにします。

7.導入ITの検討
 ビジネスモデル図で検討した項目について、IT化することが望ましいことを
選択します。このとき、ITコーティネータが、現在のITの動向などを説明し
ながら、アドバイスをしました。

8.投資効果の検討
 IT投資の費用対効果について検討します。今回は、導入ITで検討したIT
化について、すべてを検討するのは時間的に余裕がなかったので、その中の1つ
に絞って対象に検討しました。

9.成果発表
 今回の研修で検討した経営戦略およびIT化企画について発表します。

 以上のような課題を、4日間という短い期間で完成していただきました。研修
時間内で、完成しなかった項目については、宿題として次回までに仕上げていた
だいたり、途中欠席された方には担当のITコーディネータが訪問したりして、
できるだけみなさんが成果物を完成できるようにフォローいたしました。

 今回のITSSP事業は、ITコーディネータ京都がNPO法人になって、初
めての取り組みで、事務局およびインストラクタをすべてITコーディネータ京
都のメンバーが担当しました。今回の経験を活かし、今後も企業の経営とITと
の橋渡しとなるような事業をしていきたいと思います。


■執筆者プロフィール

洲崎章弘(すざき あきひろ)
洲崎鋳工株式会社 取締役 http://www.suzaki.co.jp
有限会社キララ21 取締役 http://www.kirala21.com
中小企業診断士、ITコーディネータ、ITCインストラクタ
「有限会社キララ21」は、ハードディスク完全消去ソフト「ピーマン」、CD
ーROM駆動ファイルサーバー「だいこん」などの野菜ソフトシリーズを開発販
売している。http://www.kirala21.com