日本の会社は大小を問わずたいへん会議好きである、たとえ十数人の会社であ っても一ヶ月間も全員が顔を突き合せて会議をしないでいると、お互いの間に何 か、わだかまりが出来ているようで、不安になってしまう。 そこで「報連相のために月例会議」といった風に、毎日欠かさず、朝礼、終礼を しているのに、なお且つ、これといった報告事項もないのに月に一回必ず会議を 開いてしまう。 昨今は、売上減少、利益圧迫、競争激化と会議をするネタにはつきないようで、 ますます会議が増える状況である。八方ふさがりを打ち破ろうと、経営革新、新 規事業、構造改革などをテーマに経営企画室、経営戦略部で会議がひんぱんに行 われる。 しかし、提案書、企画案、報告書といった文字、数字、グラフの入ったコピー 資料が入り混じるだけで、いっこうに結論が出ない。そして結局、会議を収束さ せる理由といえば、時間切れ、鶴の一声、お互いの力関係となる。 会議に出席しているメンバーの顔ぶれを見ると、技術、開発、営業、財務、経 営、様々な部署からの面々で、それぞれの人たちの使う言葉は同じでも、理解の 仕方や程度は天と地ほど違っているものである。これを、みんな同じ会社の人間 同士、ツーカーの如く言葉が通じ合っていると思っているから始末が悪い。 そのような状況の中で、自分が作った提案書を認めてもらうには、その完成度 を高めるしかない。そのためには、違う部署の人でも理解できるよう提案の全体 像が見渡せ、モレやダブりのない内容にすることが求められる。 モレやダブりが無いようにする方法として、マッキンゼー社が発案したMEC E(Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive)という考え方がある。 その手順は、大まかには次のようなものである 1.役立ちそうな項目をすべて挙げる 2.その項目をいくつかのグループに分類する 3.大きなモレ、重なり、ズレがないことを確認する 4.各項目の優先順位付けをする このMECEの考え方を使うだけで、モレ、ダブりがすべて無くせるわけでは ない。日頃、主観的な判断になりがちな意思決定において、常にモレなくダブり なく情報を集め、比較、分析、判断が出来るように、それぞれの目的に応じた独 自の枠組み(フレームワーク)を作ることが、完成度を高める第一歩となる。 宇宙開発のようなプロジェクトには、MECEの考え方は非常に重要なもので ある。時には何十兆円という国家予算をかけた巨大なプロジェクトが、ボルト一 本の接合ミスで、ゴミの塊となったのでは笑い話にもならない。 旧ソ連に追い越されていた宇宙開発に対して、アメリカの威信をかけて行われた アポロ計画では、わずか9年足らずの間に有人月面着陸を達成するため、PAT TERN法という手法により2329項目にもわたる技術的問題が列挙された。 その項目をひとつひとつ解決して、1969年に見事、人類初、月面にアームス トロング船長が立つことになったのである。 経営戦略、マネジメント、マーケティングに関して分析を行う場合に利用でき る枠組みは、既にたくさんのものが存在しているので、その一例を、簡単な説明 とあわせて次に挙げたので、参考にしていただきたい。 【比較】 長所・短所…ご説明不要、日頃価値判断に活用している 事実・価値…結論の根拠が事実なのか価値(判断)なのか 質・量…中身の質、全体の数(量) 効率・効果…優先順位、表裏一体の関係 【時間】 短期・中期・長期…(例)経営計画1年(短期)、3年(中期)、5年(長期) 過去・現在・未来…(例)前期対比、伸び率 【現状分析】 3 C…顧客、競合、自社 SWOT分析…強み、弱み、脅威、機会 【マーケティング】 価値連鎖…M.ポーター 製品が顧客に届くまでの付加の価値連鎖 マーケティングミックス…4P(製品、価格、プロモーション、チャネル) 事業ポ-トフォリオ…経営資源の組み合わせ 5フォース分析…M.ポーター 業界の魅力度を測定する 【マネジメント】 7つのS…マッキンゼー社 ハード要因3つ、ソフト要因4つ 戦略の実行と コントロール バランススコアカード…R.キャプラン&D.ノートン 4つの視点で業績評価 を行うシステム (参考文献:クリティカルシンキング 総合法令出版 2002年) ■執筆者プロフィール 下山 弘一(しもやま ひろかず) 税理士、ITコーディネータ、システムアドミニストレータ 京都市中京区西ノ京南上合町35シンフォニー太子道8F URL:http://www.e-komon.jp E-mail:support@e-komon.jp 経営戦略から情報化の相談まで中小企業のいい顧問でありたい |
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