経営と子育て/竹内 肇

法律では、私達いわゆる人間を「自然人」と呼び、それに対して、会社などを
「法人」と呼んで、その「法人」に対して「自然人」と同様に「人格」を認めて
います。(人間的な意味の人格ではなく、権利と義務に関する主体となれる人と
しての資格を言っているのですが・・・・)

 最近、これは、うまく言ったもんだと感心しています。

 「経営者」と「会社」の関係は、ちょうど、人間の「親」と「子供」の関係に
似ており、「経営」とは「子育て」のイメージに当てはめることができると思い
ます。

 親子の関係を段階的に考えると次のようになります。
 
(第一段階:幼年期)
 「子供」が幼い時は、ほぼ「親」の意向に従って育てられます。
 とは言え、「子供」の置かれた環境や「子供」の性格・感情を察知し
 ながら、育てなければならないことは言うまでもありません。
 この時期に「子供」の人格形成が行なわれます。
 ここを失敗すると、少年期・青年期を迎えた「子育て」に苦労します。
 <会社の設立時から経営が軌道に乗るまでです。>
 
(第二段階:少年期)
 「子供」も成長し、少年期に達すると、「子供」にも独立した「人格」
 が芽生え、「親」の管理の元ではありますが、何もかもが「親」の意
 向に従った行動をするばかりではなくなります。
 <従業員も増え、組織として活動、経営者の権限の委譲が始まります。>
 
(第三段階:青年期)
 「子供」は青年期を迎え成人し、「親」から心身共に、完全な独立し
 た「人格」において行動するようになります。
 <外部資本の注入や上場を機会に、広く投資家の元で社会的責任を負
  うようになります。>

 多くの中小企業は、この中の第二段階にいるものと思います。

 「親」の意向は反映されるものの、「子供」は、子供を取り巻く環境の影響を
強く受け、なかなか「親」の言いなりにはなってくれません。特に、今日の社会
環境の変化は目まぐるしく、昔ほどに「子育て」は簡単ではなくなっているよう
に思います。

 例えば、今日、多くの小・中学生が携帯電話を持ち歩き、メール交換をしなが
ら交友を深めています。それを親の強行な態度で、携帯電話を与えないとします
と、その子供は、他の友達から爪弾きにされ、いじめの対象となることもあり得
る時代です。
 子供は親を気嫌いし、親子の断絶という事態にも成りかねません。
かと言って、自由奔放に育てていればいいかと言うとそうでも無いようです。
一月3~5万円になる子供の携帯電話料金に悩みながらも、何も言えない親もい
るようです。

 親は、子供の置かれた環境を理解し、子供の心を察し、子供が社会の一員とし
て後ろ指さされることなく一人前に育つように、適切な助言や忠告・支援を与え
ることが出来なくてはなりません。
 それが、親としての責任です。

 経営も全く同じです。

 今の厳しい環境下においては止む得ないとも言えますが、経営者から聞かれる
言葉は、「なかなか、経営(子育て)がうまく行きません。」という声ばかりで
す。
 でも、本当は止む得ないでは済まされないのです。

 経営者(=親)は、今置かれている会社(=子)を取り巻く社会環境や、会社
(=子)の経営状況(心身の状態)を良く把握し、適切な経営方針および経営目
標(=助言や忠告)を与えてやらなければ、会社(=子)は正しく育ってはくれ
ないのです。

 あらためて、経営(=子育て)について、考えてみてはいかがでしょう。


■執筆者プロフィール

竹内 肇(タケウチ ハジメ)
中小零細企業の経営革新支援・合資会社パンカル 代表
 ITコーディネータ、公認システム監査人
 ISMS主任審査員、上級システムアドミニストレータ
 takeuchi@pangkal.com  http://www.pangkal.com/