「ICタグ」でビジネスを変える!?/杉村 麻記子

【1】ICタグとは

 最近、新聞や雑誌の記事に「ICタグ」という言葉がよく登場します。ICタ
グとは、小型のICチップを埋め込んだ、タグ(荷札)のことで、
 ・無線通信装置を使って非接触でデータの読み書きができる
 ・製品についているバーコードに替わるものとして注目される
 ・タグの単価低下、電波法の改正によって、注目度が急上昇中
 ・実はJR西日本の「ICOCA(イコカ)」にも埋め込まれている
 (サイズは、1mm以下なので、カードを見ても分かりません)
のような特徴があります。

 従来のバーコードとの大きな違いは、「書き込みができる」「読みとり範囲が
広い」「高速・同時読みとりができる」「障害物があってもOK」等が上げられ
ます。
 総務省は、「電子タグ(ICタグ)」の高度利活用による経済的波及効果を
2010年には最大31兆円と予測しています。
 年率25%で伸びている「ICタグ」は、様々な意味でビジネスにインパクト
を与えるでしょう。


【2】何に使えるの
 
 では、ICタグはどのようなシーンで利用されるのでしょうか?既に実用化が
進んだ事例もあり、研究中のものを含めると多岐にわたります。

☆★☆すでに実用化☆★☆
 ◆図書館の書籍管理
  書籍にICタグを付けて、貸出、返却などの管理を自動化する
 ◆食堂の精算簡素化
  食器の底にICタグを付けて、読みとりカウンターで料金精算
 (回転寿司店や大手企業の社員食堂で導入ずみ)
 ◆スキー場や温泉での自動精算
  防水機能を持たせたICタグで、施設内の乗り物や買い物を精算

☆★☆実用化まであと少し☆★☆
 ◆農産物のトレーサビリティー
  農産物の生産、流通、販売過程を追跡・遡及する「トレーサビリティ」を
  ICタグを利用して正確かつ効率的に行う
 ◆個品単位の在庫、入出庫管理
  単品にICタグをつけることで、仕入、検品、棚卸等の作業を省力化

 等です。いずれは、サプライチェーン全体で、現品をトラッキングしたり、入
出荷や棚卸しの効率化、店舗での販促、マーケティングといったところにもIC
タグの利用が検討されています。
 愛知の国際博覧会(2005年開幕)では、入場券に埋め込まれて、入場管理や偽
造防止に使われる予定です。

 様々な経営課題を解決してくれる可能性を秘めたICタグですが、一方で先行
して導入が進んでいる欧米では、第3者によるタグ情報の読みとりなど、プライ
バシー侵害に関わる問題が顕在化しています。
 また、リーダの読みとり精度や、ICタグやリーダーの費用面(数十円~数千
円)など普及までに乗り越えなければならない課題も多くあります。


【3】中小企業へのインパクト

 やや話題が先行気味のICタグですが、大企業だけではなく、中堅・中小企業
も、うまく活用すれば、コスト削減、売上向上に貢献できるはずです。
 既に、経営革新法やIT活用型経営革新モデル事業で、ICタグを活用した事
業が採択された会社もいくつかあります。

 ICタグの普及が進み、単価が下がってくると、小売業や卸売業で導入が進む
でしょう。無線による自動検品を行えば、棚卸や入出庫作業の効率化が進み、コ
スト削減が可能となります。
 生鮮品や食料品のトレーサビリティは、「食の安全」を意識する消費者から厳
しく追及されることになるでしょう。生産者や食品メーカーは、その対策に追わ
れることになります。

 このように、中小企業にとってもICタグが大きなインパクトを与えるのは明
白です。単に情報収集するだけではなく、自社でも利活用できないかを具体的に
検討してみてはいかがでしょうか?



■執筆者プロフィール

 杉村麻記子(すぎむら まきこ)
 ITコーディネータ 中小企業診断士
 mailto:m.sugimura@nifty.com