キャッシュフロー経営とIT投資/安井 伸夫

 先日、弊社主催のセミナーで「キャッシュフロー経営」について講演致しまし
た。弊社のセミナーでは、ただ単に話を聞くだけでは何も身に付かないことを認
識しておりますので、ご自身に書いてもらうことにより確認して頂くことを基本
としております。その時も実際の決算書をベースにキャッシュフロー計算書を作
成してもらい、自社の資金の流れとその問題点を確認してもらうという手法をと
りました。
 開講に当り、会社が潰れる時・倒産する時とは、黒字や赤字に関係なく、資金
がなくなった時であると定義致しましたので、御受講生の皆さんも真剣に取り組
まれました。
 その時思ったことは、企業がIT投資をする場合、その投資効率をどのように
把握すればよいのかということです。投資効率を測定し誤れば、企業経営に大き
な損失をもたらすからです。
 実際に多額の投資をするのですから、一時的にはキャッシュフローは悪くなり
ますし、減価償却費の計上や人件費の抑制以上に資金を増加させるメリットがな
いとなかなか踏みきれないものでしょう。また、IT機器の耐用年数からしても
早期に資金回収しなければならないのです。
 私の経験からも、何の収益も生まない本社ビルを新築したことにより、経営が
傾いたケースをよく見てきました。当たり前のことですが、収益計上に貢献しな
い投資は極力避けるべきなのです。本社ビルの場合は経営者の見栄と欲、IT投
資の場合は、システム担当者の見栄と欲は捨てるべきなのです。
 企業がIT投資をする場合は、ITコーディネータに投資効率を測定してもら
ってから投資に踏みきるのがベターです。又、ITコーディネータ自身も自らを
コンサルタントと名乗るからには、経営に対して責任をもつべきだと思います。
経営者側も「混乱さして去っていくだけのコンサルタント(コンサル=混去)」
には十分注意して下さい。


■執筆者プロフィール

安井伸夫(ヤスイノブオ)
有限会社経営サポート 代表取締役
安井税理士事務所 所長
税理士・社会保険労務士・ITコーディネータ
http://www.keiei-s.com