キャッシュフローの初歩/竹内 政明

「キャッシュフロー」という言葉を耳にされることが多くなっていると思いま
す。大企業には、財務諸表の一つとして「キャッシュフロー計算書」の作成が義
務づけられています。キャッシュフローとは文字通り現金の流出入、つまり現金
がいくら入ってきていくら出ていったかを示すものです。一方、損益計算書で計
算される利益は発生した収益から発生した費用を差し引いて計算されます。「勘
定合って銭足らず」とか「黒字倒産」といった言葉があるように、損益計算書上
の利益と同等の現預金が手元に残ることはまずありません。経営者の方のなかに
は決算書の上では多くの利益が出ているにもかかわらず、資金繰りに苦労をした
という経験を持っている方がたくさんいらっしゃると思います。今日は、そのよ
うな違いが生じる理由を簡単にみていきたいと思います。

 例えば、商品1千万円を掛により販売した場合には損益計算書上1千万円の利
益が発生します。(他の取引は全くないものとし、便宜上原価もゼロとします)
しかし、現金の回収があるまでキャシュフローはゼロとなります。翌期にこの売
掛金が回収された場合には、損益計算書上の利益はゼロですが、キャッシュフロ
ーは1千万円となります。このように、利益と実際の現金の流出入には期間的な
「ズレ」が生じる場合があります。また、銀行から1千万円を借り入れた場合、
キャッシュフローはプラス1千万円となりますが、利益はゼロとなります。この
ように現金の流出入はあっても損益には影響のない取引もあります。さらに減価
償却費のように損益の計算上費用となるが現金の流出入を伴わない取引もありま
す。
 上記の他、差違が生ずる主な項目としては次のようなものがあります。
・棚卸資産(在庫)の増減
・仕入債務の増減
・固定資産の取得、売却
・有価証券の取得、売却
 
 高度成長期では、売上を伸ばすことに重点をおいて企業経営がされてきました。
金融機関も売上が伸びていれば融資に応じていたようです。しかし現在は、選別
融資が進められています。各企業もキャッシュフローを重視した経営が必要にな
ってきています。


■執筆者プロフィール

竹内政明(たけうち まさあき)
あおぞら税理士法人
代表 税理士・ITコーディネータ
TEL075-863-3377
FAX075-863-3378
e-mail takeuchi@aozora-tax.com