ケータイ進化/松井 宏次

残暑お見舞申し上げます。

京都といえば侘び寂びと連想されることも多いようですが、夏の祇園祭りの色と
いえば、鉾や山を彩る赤。そして、そのいっぽうで、宵に深く黄色に灯る駒形提
灯もまた、たくさんの人を今年も誘っていました。
ところで、路上の鉾に向かって片手を掲げている人の群れを見て思わず唸ってし
まったのは、昨年2002年7月の祇園祭、四条通りでのことでした。
人々が手にしていたのはデジタルカメラ付の携帯電話、いえ「ケータイ」と称し
たほうが正しいのでしょう。

あれから1年、ケータイのカメラ性能は、撮影部の素子の持つ細かさの面では
100万画素を越え、単品のデジタルカメラの低クラス域に達し、電話機能付カメ
ラと呼べるほどとなってしまいました。
それほどの製品が、やがて店頭でどんどん価格割引されていくというのですから
どこか複雑な思いもします。
ともあれ、従来からのスケジューラ、音楽などの機能に加え、利用者、消費者の
予想を大きく越えたケータイの機能の多様化、充足化といえるでしょう。また、
そこには、新機種投入を続けたい各機器メーカと、新機種とはいえシェア拡大と
通信・通話料増に繋がるかどうかが重要な各通信事業者とのマーケティングのせ
めぎあいもうかがわれます。
ちなみに、ケータイの登録台数は、業界団体の発表によれば、今年2003年の6月
末で7721万3900台。この数字は、日本の労働人口(15歳~65歳未満人口)数の
約9割です。

さて、ここまで高機能・多機能化し普及をみせたケータイは何処に向うのか。
ケータイの行き先として予想されるひとつは、広範なビジネス/産業利用です。
必要な個人それぞれがビジネス用のサービスが使えるケータイを手にすることも
あれば、産業機械などに監視機能端末等として組みこまれていくといったかたち
もあり、多様なサービスならびにハードの提供が広がる可能性があります。
かつて即時対応や遠隔管理を思い描きながら実現し得なかったビジネスプランを
今一度、ケータイを視野におき直し、改めて構築を手がけてみる時期かも知れま
せん。


■執筆者プロフィール

松井 宏次(マツイ ヒロツグ)
ITコーディネータ 1級カラーコーディネーター 中小企業診断士
e-mail:hiro-matsui@nifty.com