1. はじめに
ここでは、生産システムを構築するにあたって、その生産システムで生産される"製品(商品)のライフサイクル"の視点で捉えてみる。
なぜ、これについて触れるかというと、その理由は、1980年代以前は、日本の高度経済成長の牽引役として、多様な生産形態で、それなりに顧客(大衆)の必要性のもとに、大量の各種製品を世の中に登場させてきた。しかし、1990年代に入り自動車分野、家電分野や電子機器分野を中心として、顧客からの強い必要性というよりもむしろ、満たされた生活の中で、"あれば便利"的な新製品が多く出現してきた。したがって、これらに代表される新製品の寿命が、以前に比較して極端に短くなってきたといわれている。例えば、小型コンピュータ(パソコン)は、最近では、「寿司のネタと同じである。鮮度が落ちれば、誰も買わない」とまで言われている。この鮮度の期間が3ヶ月とも4ヶ月とも言われているそうである。多品種中量生産で多くの製品が売られ続け、数年前のパソコンは、性能的に利用価値の無いものとされて次から次へと廃棄されている。このような形態で廃棄される製品が、前述の産業を中心として、今や大きな社会問題になりつつある。ここでもう一つ気づかなければいけないのは、その製品を生産するために使われたエネルギーの総量である。これは莫大な量である。まさに、待ったなしでこの問題と直視し、解決の具体的な検討がされなければ、様々な"負の影響"が、我々、"生き物"に襲いかかろうとしているといっても過言ではない。
2. 製品のライフサイクル
"製品のライフサイクル"とは、「創造-概念設計-基本設計-詳細設計-工程計画-部品製造-組立-検査-製品出荷-販売-サービス-製品解体-部品の再使用・材料等のリサイクル」のプロセスとして捉えられている。一昔前までは、製品を設計する場合、解体・廃棄の後、再使用・材料等のリサイクルをすることまで考慮されていたであろうか。
殆どの場合、そのような設計思想(創造-概念設計-基本設計の段階)で製品が生み出されていなかったのではないであろうか。例えば、部品を組み立て、1つのモジュールにし、そのモジュールを組み立て製品にする場合、その製品が使用されなくなり解体する場合、その"解体性"の評価をも考慮した思想が設計に反映されていたであろうか。おそらく、そのような考慮は、あまりされていなかったのではないかと推測される。ところが、ISO14000に代表されるように、環境問題の重要性が強く認識されはじめた今日、製品寿命の最終段階である"製品解体-部品の再使用・材料等のリサイクル"のことまでを設計に反映した製品を出荷することが、製造業の自然な姿になりつつある。当然のことながら、この対応をすることによる、製品へのコスト高が発生する。これを、吸収するのは、生産の上流工程である"製品設計:創造-概念設計-基本設計"の部分で、関連部署の人々(企画、設計、製造、営業、サービス、法務等)とその付加価値の源泉がどこにあるのかを十分に協議し結論する必要がある。
3. おわりに
ここでは、最近の"製品のライフサイクル"の捉え方を紹介した。個別の部品一つをとってみても、その"部品の再使用度・リサイクル度"が、他社の部品よりも1回多くのライフサイクルで利用できるだけでも、製品(商品)としての大きな付加価値・差別化になる可能性がある。「製品のライフサイクル」という言葉が、少しでもご理解いただければ幸いである。
■執筆者プロフィール
ITC京都 幹事
柏原 秀明(かしはら ひであき)
技術士(総合技術監理・情報工学部門)
ITコーディネータ
ISO-9000審査員補
ISMS(情報セキュリティ・マネジメント・システム)審査員
E-mail: kasihara@mbox.kyoto-inet.or.jp
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